直す作業の拡がり ―アルマイトの栞 vol.130
自宅のTVや電話、ネットの回線仕様を変えねばならず、業者の担当員二人が来て機材やケーブルの交換をした。二人のうち一人は「喋り担当」らしく、終始その喋りに引き留められ、作業は終わり、何をどうしたか見そびれた。見られたら困る作業なのか。作業中の相方は鶴の姿にでもなるのか。「パソコンとかの繋ぎ替えも簡単っ!」と喋り担当が笑い、二人は帰った。翌朝、ネットの接続トラブル発生である。初めて自分の目でケーブルの接続状況を見る。何がどこに繋がっているのか、目眩のする光景が現れた。業者へ電話し、受話器を肩で挟んで説明を聴きつつケーブルの抜き差しをしていたら、電話線を抜いてしまった。こうして人は孤立無援になる。


あちらこちらへ届けている半村良さん関連の映像ディスクだが、じつはジャケットが無い。いまさら云うのもなんですが。一応は、人に渡すためのケースは有り、間違ってもディスクを剥き出しのまま届ける愚かなマネはしていないものの、ホントは「デザインされたディスクジャケット」に入れる筈だった。「デザインする」と公言した自分の怠惰以外に、「ジャケット無し」の理由はない。この期に及んでは、何を語ろうと云い訳にしかならないわけだが、悩んでしまっているのである、ケースの種類やサイズに。サンプルとして手許に集めたディスク用のケースを眺め続けて、たぶん二ヶ月近くになり、こうなると、優柔不断と云うより馬鹿者である。
具体的にどうするか全く目算も無いまま、昨年の春頃に漠然と思い立ち、映像作家の大津伴絵さんと一緒に撮り溜めた半村良さん関連の映像を、ともかくも25分ほどの長さに編集してまとめた。大津さんと編集作業を進めつつ、仕上がる映像を見るたびに、「このシーンはもう少し手を加えたい」などと二人揃って口走り、放っておくといつまでも完成しない雰囲気なので、暫定版と呼ぶことにして作業に区切りを付けようと云う話になった。その暫定版に、よせばいいのに、また二人で手を加えた。暫定版2である。前の版よりホンの少しではあるが、質が上がった。すると、さらに欲をかく二人だ。暫定版3。ろくなものではない。二人揃って「大きい方のツヅラ」を選ぶタワケ者だ。
