どこまでも入力 ーアルマイトの栞 vol.185
喫茶店などで、たまたま隣に座った未知の人たちの会話が無闇に面白かったりして、口調もそのままに書き残したい衝動に駆られるのだが、岸政彦さんの『街の人生 』は、そんな衝動に駆られる人が本を出版した結果だ。取材依頼をしたうえでの聴き書きとは云え、やはり未知の人の語りは、口調まで含めて面白く、ましてや、語っている人が「西成のおっちゃん」だったりすれば、放っておいても話題は興味深いことになるわけで、おっちゃんは西成暴動を回想して語る。「線路の石があるやろ。ひとつ五〇〇〇なら五〇〇〇円ってな。道端で。まとめて買っとんやろ。それをな。それをまた投げとんのや」。経済学者が困惑しそうだ。