ダメなので ―アルマイトの栞 vol.205
つげ義春さんの作品を集めた新潮文庫の『無能の人・日の戯れ』には、『無能の人』全6話と6編の短編作品が収録されており、全12編の作品は共通して主人公が「注文の途絶えたマンガ家」で、それらが作者自身をモデルに描かれているらしいことは知られた話だけれど、この一冊をマンガ家志望の子どもになどは見せない方が好いと思われ、いや、考えようによっては「注文の途絶えたマンガ家」のリアルさを教えるために見せた方が好いのかもしれず、しかし、「売れないマンガ家になれば好きなだけ散歩ができて、午前中から市民プールで泳げるステキな生活だ」と、誤った夢と希望を与えかねず、キケン図書でもある。