前触れの無いSF ―アルマイトの栞 vol.100
とりたてて疑問を抱くことなく読んでいる半村良さんのSFだが、そこから半村さん公式ツイッターへ掲載するネタを拾ってリスト化し、後日そのフレーズだけを見返すと、描写された光景が妙に気になる。「宇宙人は箸を置いた」。どんな光景を思い浮かべるべきだろうか。自分は今のところ、宇宙人を見たことはないのだ。何食わぬ貌で作者が描写する光景の大半を、実は誰も見たことがないのがSF小説かもしれず、とくに海外SFの邦訳を読むとその印象が強くなる。J・G・バラードの『結晶世界』に描かれた光景などはどうすれば好いだろうか。「色彩豊かな甲冑のような彩光は消え、ほのかな琥珀色の輝きが樹から樹へと動き、金属片で飾られたような地表が翳っている」。友人からのメールだったら心配になる。