揺れる時間 ―アルマイトの栞 vol.68
つい先日、いとうせいこうさんの話を伺う機会があったのだが、そこで衝撃的なことを知った。「昔のドンカマは揺れている」。事情のわからない人には「何を云ってるんだ」と怪訝な顔をされそうな一言である。「ドンカマ」とは音楽を演奏したりレコーディングする際にガイドとなるリズム音のことで、リズムマシンなどで機械的に鳴らしている。「デジタルなメトロノーム」とでも云えば解りやすいだろうか。ちなみに「ドンカマ」は'60年代にコルグが製造販売していたリズムボックスの商品名「DONCA MATIC」が語源だった筈で、それが業界用語になった。そのドンカマが「昔は揺れてた」らしい。てっきりデジタルなジャストビートだとばかりに思っていたのだが、そうではなかったのである。