必需品を並べる ―アルマイトの栞 vol.181
失踪してホームレス生活をしては数ヶ月後に保護されることを繰り返した吾妻ひでおさんは、その体験を『失踪日記 』として描いているが、これを読むと、東京では、どうにか飢えもせずに人は生きていけるものなのだと知らされる。11月から2月までの季節を雑木林の中で、テントさえ張ることもせず、かなり凍えてはいるものの、どうにか飢えずに寝起きしているどころか、どうにか煙草も吸い、どうにか酒すら呑み、無事なのである。いや、これを「無事」と呼ぶのかとは思うが。ともかく、失踪するならば、場所は東京都内に限定すべきだ。そして忘れてならないのは、ハサミとカッターとライターを持って出ること。