Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

向こう側に居る一人 ―アルマイトの栞 vol.136

二人の会話だけで物語の殆どが進む話について考えを巡らせていたら、ベケットの『ゴドーを待ちながら』を思い浮かべたのは仕方のないことだが、そこに行き交う言葉の目指す先は、いつ読んでも不明だ。「こりゃなんだい?」「柳かな」「葉っぱはどこだ?」「枯れちまったんだろう」とか云ううちに、「だが、こいつはどっちかっていったら灌木じゃないか?」「喬木だよ」「灌木だ」と云い合いが始まり、しかし真っ当な結論に至らぬまま話題は変わる。どうしたことかと思う。もし、この二人の会話を物陰で盗み聞いたら、なんだか関わり合いにならないほうが好いのじゃないかと云う気分になりそうで、自分ならコッソリと立ち去る。

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コトバの使いみち ―アルマイトの栞 vol.135

連絡を寄こすたびに、こちらのことを電話相談室か何かと勘違いしているらしい知人が居る。「あのですね、歌舞伎役者とかの『襲名』って、英語で何て云うんですか?」。知らないよ。そもそも、英語圏の文化に存在しない事柄だとすれば、該当するコトバだって無い筈だ。とは云え、何の気無しに使っている日本語の、さもない表現ほど英語で何と云うのか知らないのも事実で、それはそれで知りたくもあり、講談社『これを英語で言えますか?』などと云う本が自宅の書棚に転がっているのは、そのせいである。けれども、この本の第1章に例示されている「逮捕令状です」「黙秘権があります」は、どんな読者を想定した結果なのか。この本で勉強してまで、英語圏で何をしでかす気だ。

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