模写する気持ち ―アルマイトの栞 vol.140
少し以前のことだが、たまたま「広島県の三次市」と耳にする機会があって、自分は真っ先に「妖怪の聖地だ」と条件反射のように思い出し、「そこは『稲生物怪録(いのうもののけろく)』の現場だ」とか口走り、しかし、そんなことを騒ぎ立てる者は他に居ないわけで、国書刊行会が『稲生物怪録絵巻集成』を出版していると知っても、云い触らす相手さえ見付からず、とは云え、知ってしまうと気になるのは致し方ないことで、とどのつまりは『稲生物怪録絵巻集成』が自宅の書棚に仲間入りしてしまった。『稲生物怪録』の存在を教えてくれた荒俣宏さんの著作と、自分に「三次市」の話題を何度も聞かせた人々のせいである。