複製のリアル ―アルマイトの栞 vol.29
Tetra Logic Studioを作る少し前に、劇場の模型製作を頼まれたことがあった。ある日、世田谷パブリックシアターの技術部長であるMさんから電話があって、「演出家打ち合わせ用の劇場模型を作ってくれ」と云われたのが発端だった。僕一人では手に余るので、模型製作が得意な卒業生をかき集めた。卒業はしたものの、どう云うわけか世間をさまよっていた連中である。そんなヤツらが何人も居たのだ。困ったものだと思いつつも、この時ばかりはその連中の存在に感謝した。随分とリアルな模型を2ヶ月ほどで作り上げてくれたのである。「オマエらは機械なのか」と云う連中だった。