Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

ふらふら追う ―アルマイトの栞 vol.188

フラフラとタワレコへ入っては、そのバンドのCDが置かれた棚の前を行きつ戻りつし、amazonへアクセスしては、そのバンドのアルバムを試聴し、そんなことを何ヶ月も繰り返した挙げ句に、「ドレスコーズ」の2ndアルバム『バンド・デシネ』をamazonで注文し、しかもDVD付きの初回限定盤に手を出し、のみならず、どうせならと、1stアルバム『the dresscodes』も「カートに入れる」をクリックしてしまい、これもDVD付きの初回限定盤を選んでしまう自分が居て、明らかに、ここ数ヶ月ばかり続いたamazonの「地道な誘惑」に完全に敗けた、と云うか、見事に転がされているが、コトの発端の責任は自分にある。

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小さな紙片 ―アルマイトの栞 vol.186

持ち歩かなければいけないIT機器の類が小さくなったり、薄くなったりすることは、不要なモノまでカバンに入れて出掛けがちの自分みたいな者からすれば嬉しいけれども、機器の小型化につれて、その取扱説明書も小さくなる状況は、どんな狙いがあってのことなのかと思うわけで、あまりに小さい取扱説明書を紛失させそうな不安に悩まされ、室内であろうと足許に落とせば、知らぬ間に掃除機で吸い込む恐れもあり、どこが安全な保管場所なのか考えていたら、靴のヒール部分に収まりそうなサイズだと気付き、きっと多くのスパイも同じ悩みから靴のヒールの中に暗号文をしまおうと決めたのに違いない。

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どこまでも入力 ーアルマイトの栞 vol.185

喫茶店などで、たまたま隣に座った未知の人たちの会話が無闇に面白かったりして、口調もそのままに書き残したい衝動に駆られるのだが、岸政彦さんの『街の人生 』は、そんな衝動に駆られる人が本を出版した結果だ。取材依頼をしたうえでの聴き書きとは云え、やはり未知の人の語りは、口調まで含めて面白く、ましてや、語っている人が「西成のおっちゃん」だったりすれば、放っておいても話題は興味深いことになるわけで、おっちゃんは西成暴動を回想して語る。「線路の石があるやろ。ひとつ五〇〇〇なら五〇〇〇円ってな。道端で。まとめて買っとんやろ。それをな。それをまた投げとんのや」。経済学者が困惑しそうだ。

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借りた本 ―アルマイトの栞 vol.184

つげ義春さんの『無能の人』などに描かれる風景が調布あたりだろうと察しは付いていたし、作者自身をモデルとした作品も多いので、つげ義春さんが調布市内の団地住まいであろうことも見当は付き、それは神代団地ではないかと推測し、その話を映像家の大津伴絵さんに喋ったら、「いや、もっと市の南側で多摩川沿いの染地にある多摩川団地」と即答され、のみならず、つげ義春さんらしき主人公が作中で散歩するコースの詳細も解説してくれ、「僕、『つげ義春を旅する』とか持ってるんで貸しますよ」と、文献まで教示され、卒論の指導をされてるダメ学生みたいな気分だ。「詳しい人」の前では、誰もがダメ学生である。

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ジャンルが変わる ―アルマイトの栞 vol.183

「音楽はジンタっぽい曲がいいなあ」と頼まれたような気もすれば、それは依頼ではなく、単なる独り言だった可能性もあるのだが、いずれにせよ、一年前の雑談めいた場で耳にしたことだから、時間の経過する中で「ジンタ」が「トルコの軍楽」に置き換わったとしても、「なんか似たようなものじゃないか」と暴論を展開して切り抜けられるような気がしたもので、『オスマンの響き~トルコの軍楽』のCDを数年ぶりに聴き、「似たようなものじゃないか」は必ずしも暴論ではないように思うものの、この音源のためにオスマン・トルコ軍楽隊の演奏を'70年代に現地録音した小泉文夫さんのような研究者からは激怒される。

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