Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

ふらふら追う ―アルマイトの栞 vol.188

フラフラとタワレコへ入っては、そのバンドのCDが置かれた棚の前を行きつ戻りつし、amazonへアクセスしては、そのバンドのアルバムを試聴し、そんなことを何ヶ月も繰り返した挙げ句に、「ドレスコーズ」の2ndアルバム『バンド・デシネ』をamazonで注文し、しかもDVD付きの初回限定盤に手を出し、のみならず、どうせならと、1stアルバム『the dresscodes』も「カートに入れる」をクリックしてしまい、これもDVD付きの初回限定盤を選んでしまう自分が居て、明らかに、ここ数ヶ月ばかり続いたamazonの「地道な誘惑」に完全に敗けた、と云うか、見事に転がされているが、コトの発端の責任は自分にある。

この何年かの間、気付けば「毛皮のマリーズ」を追い掛けてアルバムの購入へ走り続けたのは自分自身なのだから、「毛皮のマリーズ」が解散してしまい、中心人物の志磨遼平さんが新しいバンド「ドレスコーズ」を結成してアルバムを出したとなれば、電子の世界のマーケティングから自分が狙われるのは当然なのであって、メール受信のたびに「誘惑」を受けることになっていたわけだが、全ては自分で招き寄せた事態だ。それで悶々としているからバカである。けれども、そんな状況になって初めて気付かされるのは、「毛皮のマリーズ」を追っていた自分が、どうやら、つまり、知らぬ間に、志磨遼平さんを追い掛けてるらしいと云う事実だ。

一つのバンドが解散すると、ファンに必ず突き付けられる問題は、「今後、個々のメンバーを追い続けるか」であり、これは極めて悩ましい命題でもある。ドトールで午前10時半までは390円のセットになるジャーマンドックが、10時半以降は220円の単品となり、ブレンドと合わせて440円になってしまうのと同じ悩ましさで、ジャーマンドックのファンだけれど早起きの苦手な自分みたいな者は、常に全てを単品として追うしかなく、ゆゆしきことなのだが、「毛皮のマリーズ」が解散してしまった現在は「永遠に午前10時半以降のドトール」みたいなもので、つまり自分はズッと「志磨遼平」の名のジャーマンドックを単品注文するか、ブレンドを前に悩んでいたのだ、喫煙席で。

悩みの喫煙席に座っていた何ヶ月かの間に、この際だから白状するが、自分は志磨遼平さんのサイン会へも行きそうになった。偶然、入場チケットが目の前にブラ下がったのだ。けれども、聞けば、そのチケットを大勢の女性ファンが奪い合っているらしく、「それなら身を引くぐらいの分別はある」と諦めたが、まるで恋愛である。そして、「ドレスコーズ」のアルバムを二枚、それもDVD付きの初回限定盤をまとめ買いし、「恋は盲目」と、ついシェークスピアを引用してしまうほど自分はアタマがヘンになっているわけだが、人を追うことに夢中のあまり、自分が追われる立場の危険を見落としそうで、数人の友人から借りたままの居酒屋の支払いがCDどころではない派手な金額に達している。

雑記 | comments (0) | trackbacks (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

Comments

Comment Form

Trackbacks