Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

脇道にそれる ―アルマイトの栞 vol.89

作家の半村良さんの公式サイトを年内に開設する作業が進む一方で、「半村良の公式ツイッターも始めよう」と云う話が転がり出て、それは構わないのだが、既に故人の半村さんが呟き始めるのは考えものである。それで担当者を決め、半村作品から選び出したフレーズを「つぶやき」として投稿する準備を始めた。だから更に半村作品を読んでいかなければならないわけだが、ウッカリ脇道に入り込んでしまった。半村良さんが大好きだったと聞く国枝史郎に手を出した。伝奇幻想小説の『神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)』。河出文庫で約450ページの、よりによって長編だ。「脇道」と知って踏み込んだ自分が悪い。

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「同じ」と「別」の境界 ―アルマイトの栞 vol.88

今から一年と少しで没後10年となる作家の半村良さんに関わる仕事の最初は、半村良さんの公式サイト作成である。伝奇SFに限らず、多ジャンルに亘る作品を書いた半村さんは、作品形式も長編や中編、短編と多彩で、その作品数は極めて多い。公式サイトとなれば、その作品紹介も役割として担うわけで、と云うことは、やはり書籍の表紙も掲載したいと考えるのが人情である。つまり、表紙の写真が必要となり、映像作家で写真家でもあるOさんと一緒に著作権継承者のKさんのお宅へ伺い、作品リストをチェックしながらの撮影作業を11月上旬に開始した。限定出版の記念本まであるから、書籍の取り扱いには慎重を期すべきで、二人揃って白手袋をはめての作業となり、その光景はまるで警察の鑑識捜査である。ページの間に毛髪でも挟まっていたら採取すべきだろうか。

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向島の日常と電圧 ―アルマイトの栞 vol.87

鈴木一琥さんの町工場ダンス企画『すみだフリオコシ』の第一回収録が終わった。それにしても町工場はいきなり人を驚かせる。金型工場の、通りに面したガラスの引き戸を開けて一歩踏み込んだ目の前に、出し抜けに「200V」だ。何が飛び出すか知れたものではない。200Vは、スタンガンよりも遙かに低い電圧だが、とは云え無闇に身近にあれば確かに危険である。危険ではあるが、個人的にはこの種のサインやピクトグラムが大好きで、この「感電注意」のピクトは本でも見かけるが、これほど間近に見たのは初めてかも知れず、それはそれで嬉しい。「注意」以前に、「この人」はとっくに感電している。

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知名度シャッフル ―アルマイトの栞 vol.86

作家の半村良さんに関わる仕事が本格的に動きだし、半村さんの著作権継承者であるKさんのお宅に頻繁に伺っている。半村作品を読むことも継続中である。『不可触領域 』の次に読んだのは『産霊山秘録(むすびのやまひろく) 』で、その次に『石の血脈』を読み、今さらながら半村良さんの伝奇SFにのめり込んでいる。小学生の時に『戦国自衛隊 』を読んだのは、それが映画化されて作品の知名度が世間一般に高まり、TVでも予告編が流れ、その映像が子ども心に衝撃的だったからだ。しかし、それきり半村作品は殆ど読まずに通り過ぎた。子どもの頃から「歴史の謎」みたいな話題が大好きな自分としては、通り過ぎたことが不思議である。「半村良」の名前は憶えていたし、角川文庫だった頃の『石の血脈』の背表紙を書店で見てもいたが、違う作家の作品だと思い込んだ。失礼なヤツである。

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向島の難易度 ―アルマイトの栞 vol.85

町工場 向島界隈の町工場をウロウロ歩いた。鈴木一琥さんの町工場ダンス企画『すみだフリオコシ』の「ロケハン」みたいなもので、一琥さん達と一緒に幾つかの町工場に御挨拶をしたわけだが、最初に訪れた金型製作所で目が丸くなってしまった。入り口の上部に突き出た庇の先端、つまり「鼻隠し」に「水切り」の段差があるのはともかく、そこに平然と屋号が大書されている。このレタリングは難易度が高いですよ。当然、手描きである。文字が段差の部分で途切れることなく、直角に折れ曲がって連続している。几帳面である。向島の町工場地帯に足を踏み入れるやいなや、いきなり高度な技術の職人集団から「甘く見るなよ」と啖呵を切られた思いだ。

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