Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

英知は中指を立てて ―アルマイトの栞 vol.211

ふとした出来心みたいな動機から買った本は、講談社文芸文庫の『折口信夫 芸能論集 』で、一応は舞台だとかに少しでも関わっているような自分なのだから、「芸能の世界」の隅の隅のギリギリの端っこをウロウロしているように思われ、それなら「折口信夫」の「芸能論」とかは読んでおかねばならないのではなかろうか、と、酷く消極的で主体性の無い動機を心に抱き、ともかく書店の棚から本を取り出してパラパラと眺め、裏表紙には「日本の英知・折口信夫の三部作、ここに堂々の完結。」と記されているけれど、せっかくの「日本の英知」の三部作なのに、初めの二作を読まずに三作目だけ買う自分は失礼だと思う。

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憧れるズルさ ―アルマイトの栞 vol.210

なんだか近頃の河出書房新社の『文藝別冊』はズルいんじゃないかと思うほど魅力的な漫画家の特集を組む傾向にあり、5月末に刊行された文藝別冊『諸星大二郎 マッドメンの世界 』のズルさときたらハンパではなく、通常はA5版の文藝別冊なのに、本誌だけ特別にA4版の大型サイズへと拡大され、聞くところによると、後にも先にも、この特集のためだけにA4版となったのだそうで、それほどまでの特別扱いは尋常ではないと思われ、たとえば『週刊文春』が驚天動地のスクープを掲載するにせよ、通常のB5版からB4版へ拡大するなんてことは有りえないのであって、つまり文藝別冊には、有りえないことなど、もう無い。

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気になる他人 ―アルマイトの栞 vol.209

様々な職業や経歴を持つ人々の「語り」を聴き集めて著書を出し続けている社会学者の岸政彦さんの最新刊『断片的なものの社会学 』は、やはり「路上でギターを弾く80歳のおっちゃん」だとか「香港の刑務所で10年を過ごした日本人の元・ヤクザ」だとか、相当に様々過ぎる人々から当人の「生活史」を聴き、それらの「語り」をそのままの口調で文字に記すスタイルだけれど、本書で岸政彦さん本人が告白するところによれば、「語りを聴く」のみならず、ネットを徘徊しては未知の人々のブログやらTwitterを読んで回ることにも耽溺しているのだそうで、取材対象の誰よりも、先ず岸政彦さん本人が最も不可思議な人だ。

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どこなのか ―アルマイトの栞 vol.208

マーティン・デニーは「南国の楽園」をコンセプトにして音楽を作り続けた人だから、アルバム『ベリー・ベスト・オブ・マーティン・デニー 』だとかのジャケットは、誰の目にも「南国っぽい」と映るものの、そもそも「南国っぽい」の「南国」とはどこなのかと首を傾げ、ジャケットの女性はアメリカあたりの人だとしか思えず、ことによると彼女はどこかの南国へ家出して来た少女で、「ちょっと親とかムカついたんでー、出て来ちゃってー、ここでコスプレとかしてて超たのしいわけー」が真相だったりするのかもしれず、そんな少女たちの集まる南国でマーティン・デニーはスカウト行為もしてやしないか。

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2.5へ近付く ―アルマイトの栞 vol.207

マンガやアニメやゲームを原作とする舞台の公演が増えていることに気付いたのは、たぶん2003年頃なのだが、自分とは接点の少ない公演ジャンルなのか、そのジャンルの動向をあまり知らないままボンヤリと過ごし、「2.5次元」と呼ばれる公演ジャンルなのだと漠然と知って、「それは原作ファンが喜ぶだろう」とか思っていたら、いきなり雑誌ユリイカが今年4月の臨時増刊号で『2.5次元 2次元から立ちあがる新たなエンターテインメント』なんて特集を組むものだから、どうもタダならぬ盛り上がりぶりのジャンルらしいと今さら気付く酷いノロマの自分で、1938年の小説など読み耽って喜んでいる場合ではない。

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