どこなのか ―アルマイトの栞 vol.208
マーティン・デニーは「南国の楽園」をコンセプトにして音楽を作り続けた人だから、アルバム『ベリー・ベスト・オブ・マーティン・デニー 』だとかのジャケットは、誰の目にも「南国っぽい」と映るものの、そもそも「南国っぽい」の「南国」とはどこなのかと首を傾げ、ジャケットの女性はアメリカあたりの人だとしか思えず、ことによると彼女はどこかの南国へ家出して来た少女で、「ちょっと親とかムカついたんでー、出て来ちゃってー、ここでコスプレとかしてて超たのしいわけー」が真相だったりするのかもしれず、そんな少女たちの集まる南国でマーティン・デニーはスカウト行為もしてやしないか。
それで、やはり、その「南国」とはどこなのかと考えを巡らせつつ、あらためて聴く『ベリー・ベスト・オブ・マーティン・デニー』の最初の曲『クワイエット・ヴィレッジ』は、冒頭に「ピヨロロヒョロロロロロ~」と鳥の鳴き声らしき音が入るので、「南国っぽい」の「南国」とは、「ピヨロロヒョロロロロロ~」と鳴く鳥が棲息している場所に違いなく、すると次に解明すべき問題は「ピヨロロヒョロロロロロ~」と鳴く鳥の種類を明らかにすることで、こんな場合にネット検索するキーワードを思い付かないから、「ピヨロロヒョロロロロロ~」のままググってみると、Googleの画面が問い返してきた。「もしかして:ピョロロピョロロロロロ~」。そっちが正しいのか?。
自分の耳には「ピヨロロヒョロロロロロ~」と聞こえるけれど、Googleが「ピョロロピョロロロロロ~」だと主張するから、その「ピョロロピョロロロロロ~」で教えてもらおうじゃないかと検索結果を表示したら、「アカショウビン」が現れた。確かに鳥だ。これで棲息地が判れば、「南国っぽい」の「南国」もハッキリするわけだから、Wikipediaで「アカショウビン」の項目を開くと、「東アジアと東南アジアに広く分布する。」などと壮大な答えが書かれているばかりか、鳴き声は「キョロロロロー」だと断言しており、「ピヨロロヒョロロロロロ~」説と「ピョロロピョロロロロロ~」説の論争は「キョロロロロー」説による調停で和解したが、「南国はどこか」の問題は全く解決しない。
結局のところ、手掛かりはジャケットで、「南国っぽい」と感じる原因は、女性の左右に拡がるスダレみたいなモノではないかとも思われ、細い丸竹で作ったスダレのように見えるのだが、こんな類のスダレを、玄関へ入った目の前だとか、居間への入り口に掛けている家庭が、ある。中学生の頃、同級生のK橋クンの家へ遊びに行くと、こんなスダレをくぐったことを思い出し、すると、ついつい「南国っぽい」と思ってしまう謎の場所は、南国などではなく、丸竹のスダレを玄関近くに掛けた家で、アカショウビンを飼っており、もしかするとK橋クンの家そのものかもしれず、K橋クンを遊びに誘おうと訪ねたら、「シンイチなら出掛けた」と、丸竹のスダレからヤンキーな高校生の姉が顔を出したりする。
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