見取り図に潜むもの ―アルマイトの栞 vol.141
広い展示会の会場で、どうやら自分が迷子になってるらしいと気付いたのは、会場に足を踏み入れて20分後くらいだったろうか。街中で迷子になった場合は早々に気付くのだが、展示会の場は事態が発覚するまでに随分と時間が掛かるのだと知った。その原因は、会場内のどこを見回しても愉しいからで、目を奪われるままにフラフラと展示ブースを覗きながら面白がって歩くうちに、自分の現在地が判らなくなる。エサに釣られて簡単に罠に掛かるタイプだ。けれども、酷い方向音痴の自分としては、決して無警戒に会場へ入ったわけではない。入場する前に、高い場所から会場全体を眺め、「見渡してしまえば勝ちだ」と考えた。慢心だった。