Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

長くする手口 ―アルマイトの栞 vol.138

本の奥付とか映画のエンドロールとか、何であれ「クレジット」の類を、ともすれば本編以上にジッと見つめる傾向があり、花輪和一さん『刑務所の前 』の奥付に表記された「消しゴムかけ=白石幹人(小学館)」などは気になって仕方がない。無闇と情報量の多いクレジットに惹かれる自分で、それゆえにYouTube公開の映像『半村良の空想力』は約24分の本編中、3分46秒がエンドロールになってしまい、自分でもどうかと思うが、更に今さら「出典に『不可触領域』を忘れた」と悔やんだりする。インタビューに登場する画家の岩永忠樹さんは、『不可触領域』の登場人物「岩永」のモデルだった。忘れていた。あと2秒、エンドロールを長く出来たのだ。誰も取り合ってくれそうにない悔悟である。

消しゴムかけであれ、花輪和一さんの緻密なペン画の漫画原稿を相手にすることを想像すると、緊張する。消しゴムを使えば必ず勢い余って紙を破く馬鹿者が居るが、そんなヤツに頼んではいけない。むしろ、尋常ではないほど細やかに消しゴムかけの出来る者にしか頼めない作業で、それは「消しゴムかけのプロ」とか呼ばれてるような誰かだ。そして「プロ」であるなら、スタッフとしてクレジット表記されるのは当然で、こうなると「消しゴムかけ」は漫画に限らず、映像制作のスタッフに登場しても不思議はなく、すると『半村良の空想力』にもスタッフのクレジットが一人増やせる。打ち合わせ用のコマ割りスケッチに消しゴムかけの作業をしたのだ、自分で。

近頃は見かけないが、ある時期の音楽アルバムでは、なぜだか「使用機材リスト」もクレジット表記の中にあり、楽器やレコーディング機材、ミキシング機材の名称がズラズラと書かれ、例えば「Roland JUPITER-8」のようにメーカ名と品名が記されていた。これもクレジット表記を増量する手として使える。『半村良の空想力』のエンドロールに当てはめるならば、スタッフ名としての「消しゴムかけ」に留まらず、使用した消しゴムの名称を記せば好いのだ。「STAEDTLER MARS PLASTIC」。何やらひどくカッコイイではないか、消しゴムのヤツ。トンボの消しゴムも使った。「Tombow MONO」。ヴィンテージ物のシンセみたいだ。しかも、消しゴムだけで2機材の豪華なクレジットである。

消しゴムのことばかりでエンドロールを引き延ばすのも如何なものかと思うので、他に何か使えそうなスタッフ名などがないかと気にしながら、レンタルDVDの映画をボンヤリと観ていた。7年ほど前の邦画である。画面を流れるエンドロールの終盤に、スタッフ名としては見慣れぬ名称が現れた。「世話人」。なんだ、それは。パーティーでもやらかしたのか。もしかして、打ち上げの幹事のことか。だとすれば、自分が迂闊だったのだ。『半村良の空想力』は、打ち上げをしていない。先ずプロ級の幹事が必要だ。携帯電話に呑み屋をいくつも登録しているような人が「プロ」である。その人の携帯電話を使用機材リストに加えるのは無論のことで、欲を云えば、ヴィンテージ物の機種を表記したい。

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