Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

売りに行く ―アルマイトの栞 vol.146

自宅の本を少し処分しようと考え、資源ゴミでも好いのだが、ふと思い立ち、近所の新古書店に持ち込んでみた。買い取り価格に期待などしなかったが、大型の紙袋一つにギッチリと詰め込む冊数だ。売れた。売れたが、その帰りに煙草を一箱買って珈琲を飲んだら、売上金は無くなった。そんなものだ。『中原昌也 作業日誌2004→2007』に書かれた中原昌也さんの日常を、笑えない。「所持金が無い」と嘆いては大量のCDやレコードを売りに出掛け、その金で帰りにレコードを買ったりして、また所持金が無くなる。しかし、音楽を仕事にする中原昌也さんの行為と比べれば、自分は愚か者で、せめて売上金でガムテープでも買うべきである。

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ウカツだった ―アルマイトの栞 vol.145

どこでも好いから住宅街を見渡せる場所はないかと探したら、観覧車を見付けた。周辺に高層の建物は無く、その地域で唯一ダントツの高さを誇っているのが、この観覧車らしいとなれば、乗るしかないじゃないか。休日の昼少し前の時間にデパートの屋上の観覧車へ乗るには、いったいどれほど並ぶのかと、飲食フロアのあちらこちらに並ぶ家族連ればかりの行列を横目に、観覧車の乗り場へ向かった。客が、自分しか居なかった。「運転休止」かと思ったら、観覧車は回っている。やはり、客は自分しか居ない。観覧車に一人で乗り、一周して降りても、他に客が居なかった。たった一人の乗降係の人に、友情を覚えそうになった。

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分解を振り返る ―アルマイトの栞 vol.144

誰から教わったのかは忘れたが、パソコンを分解して何かをするならば、作業工程毎にデジカメで記録写真を撮っておくと、作業を振り返る必要が生じたときに便利だと聞いたことがあって、それは賢い知恵だと、その誰だったかを尊敬した。尊敬したのに、誰だったのかを忘れてしまった。失礼なヤツだ。ともかく、昨年の夏に何の前ぶれも無くダメになってしまった自宅のMacを放置していたので、そいつからHDだけ取り出して、復活なり再利用なり出来ないかと考え、分解作業を始めた。そして、「記録写真を撮ると便利」の知恵を、分解作業が終わった時点で思い出した。そこで撮影したが、それでは「記念写真」だと思う。

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手足肩腰 ―アルマイトの栞 vol.143

2013年もTetra Logic Studioを宜しくお願いします。順番だから当然なのだが今年は巳年で、つまりは蛇だ。するとその直前の年末に、なんだか蛇の絵を描かなければイケナイような強迫観念に襲われる事態となり、けれども、蛇を描くのは難しい。この種の絵は、漫画家の諸星大二郎さんが上手く、それで『魔障ヶ岳 妖怪ハンター 』などを開いて「蛇、蛇」と呟きながら眺めていたら、つい読み耽って止まらなくなった。ダメじゃないか。それでも、「蛇」とか「蛇らしきモノ」の絵を見付け、「上手いなあ」と尊敬する。繰り返すが、蛇を描くのは難しい。蛇の何が難しいって、手足が無い。すると必然的に、肩も腰も無い。デッサンを拒絶する生き物なのじゃないか。

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五十音 ―アルマイトの栞 vol.142

書店で、作家名の五十音順に本を並べている光景は珍しくなく、その場合に見かけるのは「あ:芥川龍之介」で始まるような並び方だ。海外作家だと、「ア:アーヴィング」から始まるような感じだと思う。作家名の五十音順とは、大抵そのようなことになるのだと信じ込んでいたから、『私が選ぶ国書刊行会の3冊 国書刊行会40周年記念小冊子』の巻末に付された索引に驚いた。それは五十音順に並んだ国書刊行会の出版目録なのだが、最初に名前の出て来る著者が「アレイスター・クロウリー」である。『麻薬常用者の日記』とか『霊視と幻聴』などを書いた、20世紀初頭の「魔術師」だ。五十音順で魔術師がトップになる図書目録を、他に知らない。

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