Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

いろいろ届くので ―アルマイトの栞 vol.171

2014年もTetra Logic Studioを宜しくお願いします。年末には知人から、多過ぎるとしか思えない量の餅を頂き、ありがたいことだ。宅配便で届いた餅の箱は妙に大きく、厳重にガムテで梱包してあった。風邪気味でグタグタだったが、餅を放置するとロクなことはないので、箱を開けた。大量の餅の他に、蜜柑、リンゴ、そして、なぜか醤油。「日本の近代文学」めいた年末の差し入れで、自分は「東京の下宿で売れない小説を書いてる売れない小説家」だろうか。そんな妄想を抱いたら、箱の底から干し柿が二つ現れた。こうなると、日記帳に万年筆で俳句でも詠むべきではないかと思うが、日記帳も万年筆も持っていない。

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遭遇 ―アルマイトの栞 vol.170

何の気無しに国書刊行会のサイトを覗いたばっかりに、空飛ぶ円盤の本へ手を出してしまうのである。だしぬけに『何かが空を飛んでいる 』と云われたら、気になるじゃないか。しかも、表紙の中央下に、子どもの頃、本で見て真剣に怯えた「宇宙人」が立っていて、これも「接近遭遇」の一種だ。そして自分から近付き、本を入手し、急かされるように読み進むと、幼少期に何かの本で読んだ「UFO関連の話」が目白押しで、記憶の扉が次々と開いてしまい、こんな話題に関してばかり基礎教養のある自分をどうかと思う。それにしても、人を誘拐して円盤へ連れ込む宇宙人は、なぜ、どいつもこいつも「人のヘソに針を刺す」のか。

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ふぬけになる ―アルマイトの栞 vol.169

舞踏家の細田麻央さんが出演するイベントの告知を聞き、映像家の大津伴絵さんが「記録を撮影しますよ」と申し出て、それに引きずられて自分は「撮影助手」と称して出掛け、会場に設置した二台のカメラの一方の後ろでボンヤリと立ち、休憩時間には三人で煙草を吸いに会場の外へ出た。すると、休憩して煙草を吸ってるだけの行為が、なんだか路上パフォーマンスみたいな光景になる不可解さで、それも致し方ないのは、街中で、白塗りをした巫女装束の喫煙者に出くわす確率が極めて低いからだ。大津さんも同じように思ったのか、気付けば、くわえ煙草のままカメラを回していた。密着取材の光景まで現れる。

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表記に値する ―アルマイトの栞 vol.168

レンタルした’77年の日本映画を観ていたら、スタッフとして「音楽監督」とは別に「シンセサイザー演奏 深町純」の表記が現れ、名前の字面に見覚えがあるような、けれども詳しく知らない人だったので、田中雄二著『電子音楽in JAPAN』の索引を調べた。あった。凄い本だと思う。過去に何度も同様の疑問に遭遇し、この本の索引を調べ、すると必ず答えが見付かる。A5版587ページ、二段組み本文にギッチリ詰まった約6ポイントの文字、欄外に掲載された機材とアルバムジャケットの写真群、巻末に年表も付いて、本の厚さは辞書と見まごう5cmだ。「一家に一冊、必携!」の価値は冠婚葬祭マナー本に勝る気さえする。

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待ち続けて ―アルマイトの栞 vol.167

決めた日程が当日に延期となり、あらためて関係者同士のスケジュールを調整して再決定となった日程が、その当日になって再び延期となり、そしてまた関係者同士のスケジュール調整が始まる。なんだか、もう永久に「その日」は訪れず、スケジュール調整と日程延期の連鎖する世界に閉じ込められたような気がして、そうだとすれば、極めてレベルの低い悪夢だと思う。レベルの高い悪夢は「ある朝、虫になってた」みたいな話で、それはカフカの『変身』だが、その『変身』が自宅の書棚に3冊も存在すると気付き、それもまた悪い夢のようではある。異なる邦訳を見付けては買ったらしいが、夢中遊行なみに自覚が無い。

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