ウカツだった ―アルマイトの栞 vol.145
どこでも好いから住宅街を見渡せる場所はないかと探したら、観覧車を見付けた。周辺に高層の建物は無く、その地域で唯一ダントツの高さを誇っているのが、この観覧車らしいとなれば、乗るしかないじゃないか。休日の昼少し前の時間にデパートの屋上の観覧車へ乗るには、いったいどれほど並ぶのかと、飲食フロアのあちらこちらに並ぶ家族連ればかりの行列を横目に、観覧車の乗り場へ向かった。客が、自分しか居なかった。「運転休止」かと思ったら、観覧車は回っている。やはり、客は自分しか居ない。観覧車に一人で乗り、一周して降りても、他に客が居なかった。たった一人の乗降係の人に、友情を覚えそうになった。