Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

消す方法 ―アルマイトの栞 vol.114

西新宿の界隈を、映像作家のOさんと一緒にカメラを持って歩き回った。半村良さんの『高層街』の物語に沿って歩き回ったのだ。『高層街』は1980年11月の西新宿を舞台にして始まる。半村さん本人と思しき小説家が、開業二ヶ月後のハイアットホテルに長逗留して原稿を書いている状況設定で、なにせ表題が『高層街』だから、ハイアットから見える高層ビルの名前が目白押しに登場する。ハイアットを扇の要に、北東方向の野村ビルから時計回りに南のNSビルまで、8棟のビル名が並ぶ。その光景を、作品と同じように撮影してみようと出掛けたわけだが、困った。ヒマな人は地図を見て欲しい。高さ243mの都庁が邪魔だ。コクーンタワーはセンタービルの向こう側なので、見えないことにした。

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読了できない場合 ―アルマイトの栞 vol.113

河出書房から刊行された文藝別冊『追悼 小松左京』は、執筆陣が驚くほど豪華だ。つい買ってしまうのは仕方が無いが、そもそも自分はそれほど小松左京さんの作品を読んでいない。むしろ、『日本沈没』を読み始めては途中で挫折した経験が十代の頃に幾度もある。しかも、なぜか必ず上下二巻の上巻まで読んで挫折するのだ。だから、『日本沈没』の上巻のラストシーンだけは無闇にハッキリと記憶している。何の自慢にもなりはしない。さいとう・たかをさんが劇画化した『日本沈没』は全三巻だったが、これですら二巻あたりで挫折した。原作の上巻ラストと同じ箇所だった。なにか、してやられたような気分になったが、つまり自分はいまだにベストセラー『日本沈没』の結末を知らないのである。

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ロケハンの人数 ―アルマイトの栞 vol.112

「ロケハン」と呼ばれる行為を目的に出掛ける場合、それはいったい何人くらいで出掛けるのが適正なのだろうかと考えながら、カメラを片手に一人で出掛けた。「それは散歩だよ」と云われそうでもあり、しかしそのコトバを否定できる程の強い反証材料も無い。「お散歩ですか?」と誰かに声を掛けられたなら、「はい」と答えておくのが無難と云うものだ。しかし、散歩中の者が、自分とは縁もゆかりもない見ず知らずのマンションにカメラを向けたりするだろうか。それは「不審者」なのではないかと、ファインダを覗きながら思った。咄嗟にアタマに浮かんだのは、「古いマンションを観て全国を歩くのが趣味なんですよ」と云うデタラメな台詞だ。

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3.5週間後に気付く ―アルマイトの栞 vol.111

どう考えても時間が経ち過ぎではないかと思うが、鈴木一琥さんダンス公演『龍の声』の打ち上げがあったのだった。公演から三週間以上が経過して「打ち上げ」と云うのもどうなのか。もう、何を打ち上げたら好いのかよく判らないのである。「これは公演の打ち上げなのだ」と強い自覚を持ち続けることが出来なければ、それはただの「呑み会」になってしまう。そして、それは「不可解なことに」と云うべきかもしれないが、出席した全員が「これは公演の打ち上げなのだ」と強く自覚をして集まったらしく、きちんと「打ち上げ」になっていた。その席上で一つの指摘が出た。「この公演って、じつは野外公演だったんじゃないか」。三週間以上も過ぎて、なんてことを云い出すのだ。

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溜め込み、停滞 ―アルマイトの栞 vol.110

SFマガジン2011の11月号 なにかと失速気味である。作家の清水義範さんが『半村良クロニクル』と題したエッセーを30回に亘って半村良オフィシャルサイトに連載してくださったが、連載が終了したいま、半村サイトの目立った記事更新が滞り気味なのである。地道なサイト更新は継続されている。サイト開設時に掲載が間に合わなかった半村作品の紹介が少しずつ増えたり、半村さんの話題が『S-Fマガジン』などに登場すれば、その情報を掲載している。サイトを小まめに覗いて隅々までジックリと眺めて貰えれば、判る。その細かな更新に気付けるかどうかを試す「半村良サイト検定」でも始めたい気分だが、それは何の役に立つ資格検定だろうか。

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