Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

溜め込み、停滞 ―アルマイトの栞 vol.110

SFマガジン2011の11月号 なにかと失速気味である。作家の清水義範さんが『半村良クロニクル』と題したエッセーを30回に亘って半村良オフィシャルサイトに連載してくださったが、連載が終了したいま、半村サイトの目立った記事更新が滞り気味なのである。地道なサイト更新は継続されている。サイト開設時に掲載が間に合わなかった半村作品の紹介が少しずつ増えたり、半村さんの話題が『S-Fマガジン』などに登場すれば、その情報を掲載している。サイトを小まめに覗いて隅々までジックリと眺めて貰えれば、判る。その細かな更新に気付けるかどうかを試す「半村良サイト検定」でも始めたい気分だが、それは何の役に立つ資格検定だろうか。

そんな状況に至った原因は、自分の失速だ。半村良オフィシャルTwitterの日々更新だけでも滞らせないようにと、やはり相変わらず半村作品を読み続けてはいるものの、その読書すらペースダウンしている。Twitterに掲載するフレーズの候補に付箋を貼りながら読んでいるわけだが、その付箋が足りなくなったのだ。かなり馬鹿者な云い訳だと、自分でも思う。付箋のリサイクル使用に執着する自分が悪い。付箋を貼ったフレーズを、自作の掲載候補リストに加え、付箋を剥がしてまた使うと云う作業を繰り返していたのだが、「自作のリストに加え」の部分をサボってしまい、つまり、付箋を貼りっぱなしの本が二冊溜まり、そして、付箋が無くなった。付箋を買い足せば済む話ではないでしょうか。

少しでも付箋を節約しようと考え、Twitter掲載候補に加えたいフレーズと出くわしたら、その場で携帯電話に入力することにした。しかしこれがまた、読書を一層ペースダウンさせる。立て続けに気に入ったフレーズが現れると、何度も読書を中断して携帯電話への入力作業に没頭し、物語の展開が判らなくなったりする。それで、少し戻った箇所から読み直し始めるものだから、文庫本一冊の読書が遅々として進まない。そのうえ、自分の携帯電話はいま、「し」と入力しただけで予測変換機能が「死神」と書きたがるようになってしまった。ウッカリすると誰かに不吉な誤変換メールを送りかねない。携帯メールを打つスピードまでダウンする始末である。さっさと『死神伝説』を読了すべきだ。

たった一冊の文庫本を読み通す気力が失せる季節なのかも知れず、次に読む半村作品は短編集を選ぼうと考えるのだが、短編集ですらノロノロとしか読めない恐れもあり、その証拠に先日、寄り道した書店でなぜか「歌集」の棚の前で足が止まった。短編どころか、短歌の長さまでしか読書の集中力が保てなくなったのか、山崎方代の歌集を探す自分が居た。軒並み品切れを知って諦めたが、帰宅して開いた本は年表だった。箇条書きの文しか読めないとしたら、コトである。「1696年。ニュートン、ケンブリッジからロンドンへ転居」。だから何なのかと云う話だ。年表を読み耽っている場合ではない。それで取り敢えず、どこかに付箋が余っていないかと家捜しを始めた。いつ、読書に戻るつもりなのか。

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