妖怪をあきらめて ―アルマイトの栞 vol.191
子どもたちのブームに便乗するわけではないけれど、講談社文庫に加わった水木しげるサンの『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様
』は、本自体が「文庫本の妖怪」なのかと思う厚さ4cmのシロモノで、そこに巻き付いた帯には「遂に出た! 枕にもなる!」と、妖怪の甘言らしい文字が躍って人を化かす気らしく、しかし重要なのは「決定版」の文言である。決定してしまったのだ。日本の妖怪に関して事典を編むことは、もう誰にも許されない。なんか、日本中の子どもに「あきらめ」を教えてるみたいで気が引けるのだが。少なくとも、「将来の夢は妖怪の仲間に加わることです」と卒業文集に書いても、もう遅いヨ。



フラフラとタワレコへ入っては、そのバンドのCDが置かれた棚の前を行きつ戻りつし、amazonへアクセスしては、そのバンドのアルバムを試聴し、そんなことを何ヶ月も繰り返した挙げ句に、「ドレスコーズ」の2ndアルバム『バンド・デシネ』をamazonで注文し、しかもDVD付きの初回限定盤に手を出し、のみならず、どうせならと、1stアルバム『the dresscodes』も「カートに入れる」をクリックしてしまい、これもDVD付きの初回限定盤を選んでしまう自分が居て、明らかに、ここ数ヶ月ばかり続いたamazonの「地道な誘惑」に完全に敗けた、と云うか、見事に転がされているが、コトの発端の責任は自分にある。
やはり、それほどまでに論じたい人が多いテーマだったのかと思わざるを得ない雑誌ユリイカの臨時増刊『総特集 イケメン・スタディーズ』をパラパラと眺めれば、ここぞとばかりに「イケメン」の容姿に関する議論や考察が繰り広げられ、人の顔を取り挙げたうえで縦横無尽に論を説き起こす内容は、ナンシー関さんの『小耳にはさもう』以来の快挙ではなかろうかと勝手なことを考えたりしたが、何の根拠も在るわけではなく、ナンシー関さんの彫った「消しゴム版画の滝沢秀明」を思い出しただけだ。そして、ちょうど「どこかにイケメンは居ないか」と探している最中でもあるのだが、決して私的な動機からではない。
