Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

青いキンキラ ―アルマイトの栞 vol.77

また舞台照明の仕事を頼まれてしまった。今度はシャンソンのコンサートである。知っているようで知らないような、なんとも微妙なジャンルだ。とっさに思い出すのは越路吹雪の姿くらいで、それは殆ど偏見かもしれない。「エディット・ピアフも居るでしょ」などと怒られそうだ。何はともあれ、送られて来た当日の楽曲リストを見た。「何曲かは知っている」と思ったが、それはむしろ「思い上がり」だ。「この曲は知っている」とは、えてして「この曲のサビだけは何となく知っている」程度のことに過ぎず、それは「知っている」うちには入らない。つまり、しっかりと聴かなければいけないのだ、リストにある32曲ものシャンソンを。ベスト盤の価値が個人的に急上昇する。

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引き延ばして6年 ―アルマイトの栞 vol.76

2004年の10月に、外苑前にあったGallery ART SPACEで『水脈抄』と名付けた作品展をやってから6年近くになる。この時は作品展の期間中に舞踏家の細田麻央さんに来てもらい、写真家の青木香織さんとのフォトセッションをしたのだった。そこから次の作品のカタチを探ってみようと思って居たのだけれど、怠惰でマイペースな自分の性格が災いして、それっきりになって現在に至っているわけで、今さらながらではあるけれど、やはりこれはどうにかしたほうが好いんではないかと考えたりする。

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舞台の向き ―アルマイトの栞 vol.75

もし屋外で何かイベントの類をすることになり、そこに仮設ステージが必要となったら、人はその舞台の向きをどのように決めるだろうか。商店街が企画して駅前などで催される祭りの仮設ステージは、誰がどのような判断で「正面の向き」を決めるのだろうか。「どっちを向いたって同じじゃないか」と思いはするものの、誰かが何らかの判断で決めなければならないのも事実である。

江戸時代の、まだほとんど「屋外公演」に近い様相だった歌舞伎について、「舞台は南向き。役者の正面に日光が当たり、客は逆光の舞台を観ずに済んだ。舞台から見て左側を東、右側を西と呼ぶことの起源」と聞いたのは学生時代のことだ。「ああ、なるほど」と思った。しかし、それから何年か経って、その話に不審を抱いた。何の必要があったのかは忘れたが、江戸の古地図を図書館で見ていた。幾つもある芝居小屋の向きが、必ずしも先の話と一致しない。気になったので大阪の古地図も調べたら、話はますます混乱するのである。舞台の向きはバラバラで、真北を向いている場合すらある。同じ芝居小屋が、移転する度に向きを変えていたりもする。その一方で、劇場用語として「東西」の語を使うことも現在に至るまで事実なので、つまり「舞台の連中はいい加減なヤツらだ」と思うよりないのである。

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『人間椅子』を読む ―アルマイトの栞 vol.74

江戸川乱歩の『人間椅子』を朗読劇で上演すると聞いて、出掛けてみることにした。今風の言葉なら「ドラマリーディング」である。しかし、何を思って「乱歩をドラマリーディング」となったのか。そして、よりによって『人間椅子』である。たしかに、『人間椅子』はただ「読む」ほかない作品である。なにせ物語の大半は「手紙」だ。読むよりないではないか。それで出掛ける前に『人間椅子』を読み直した。あらためて読んでみると、どうにもこの作品は妙だ。なんとなく読んでいた時には気付かなかったが、もしこの作品を舞台で上演するならばと考えると、妙なことが気になり始める。

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『3.10』とスポットライト ―アルマイトの栞 vol.73

鈴木一琥さん公演『3.10~10万人のことば』は二日間3公演の全てが満員御礼で楽日を迎えました。御来場頂いた皆さま、ありがとうございました。また、事前予約でほぼ満席だったため、当日券の発行をお断りせざるを得なかった方々には失礼を致しました。

限られた設備と環境の会場で舞台作品を上演する側に立つと、今さらながらに「はじめての理科」の様相になる。今回の舞台照明を頼まれて、ギャラリー・エフの照明器具を扱った当初、一琥さんをはじめ誰しもが口にしたことは「もっとピシッと明かりを絞れないかな」だった。備品の作品展示用スポットライトは光が拡がってしまう。それをどうにかして絞り込んだ輪郭の明かりに出来ないかと、アタマの中で連想ゲームを始めたら、「望遠鏡はどう?」と聴こえた気がした。「耳の中の小人が云うのね」などと騒ぎ出したら、ことである。

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