Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

「らしさ」の要素 ―アルマイトの栞 vol.131

ある印刷物の制作打ち合わせで、「新聞的なデザイン」と話が決まり、それで自宅の書棚に埋もれていた『天井桟敷新聞 全縮刷版』を探し出した。寺山修司主宰「演劇実験室 天井桟敷」が、'67年から'83年まで発行していた全26号の「新聞」をA5版に縮刷した本だ。「新聞の模倣」としては秀逸で、その「新聞らしさ」の一つは豊富な掲載広告の存在だと思った。ただ、広告主の多くが飲食店なのはともかく、どこかのキャバレーの「松井須磨子型から加賀まりこ型まで美女3,000名!」と云うキャッチコピーはどうなんだ。「松井須磨子」から「加賀まりこ」までの間の2,998名がどんなグラデーションなのかを教えて欲しい。

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直す作業の拡がり ―アルマイトの栞 vol.130

自宅のTVや電話、ネットの回線仕様を変えねばならず、業者の担当員二人が来て機材やケーブルの交換をした。二人のうち一人は「喋り担当」らしく、終始その喋りに引き留められ、作業は終わり、何をどうしたか見そびれた。見られたら困る作業なのか。作業中の相方は鶴の姿にでもなるのか。「パソコンとかの繋ぎ替えも簡単っ!」と喋り担当が笑い、二人は帰った。翌朝、ネットの接続トラブル発生である。初めて自分の目でケーブルの接続状況を見る。何がどこに繋がっているのか、目眩のする光景が現れた。業者へ電話し、受話器を肩で挟んで説明を聴きつつケーブルの抜き差しをしていたら、電話線を抜いてしまった。こうして人は孤立無援になる。

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喋りを記録したならば ―アルマイトの栞 vol.129

唾玉集―明治諸家インタヴュー集 (東洋文庫) 漠然と「記録」の名目で撮った気もする映像を、キチンとまとめたいと云う話が出た。「記録」と称して撮影された映像は、えてして誰も視ない。写真以上に、誰も視ない。だから、この話がデザイナーのKさんや、撮影してくれた映像作家の大津伴絵さんから出たことは嬉しい。それは某氏のインタビューや対談映像で、つまり「喋り」だ。それを面白く残す手法を三人で話していたら、平凡社の東洋文庫シリーズにある『唾玉集(だぎょくしゅう)』を思い出した。明治30年頃に、様々な職業の古老に取材した話を、口調もそのままに文字にしている。老刑事が語る。「それァ泥棒にも、一種の病気で他人の物が只何となく欲しくッて盗人をする奴もある」。奇書に相違ない。

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目指すパッケージ内容 ―アルマイトの栞 vol.128

あちらこちらへ届けている半村良さん関連の映像ディスクだが、じつはジャケットが無い。いまさら云うのもなんですが。一応は、人に渡すためのケースは有り、間違ってもディスクを剥き出しのまま届ける愚かなマネはしていないものの、ホントは「デザインされたディスクジャケット」に入れる筈だった。「デザインする」と公言した自分の怠惰以外に、「ジャケット無し」の理由はない。この期に及んでは、何を語ろうと云い訳にしかならないわけだが、悩んでしまっているのである、ケースの種類やサイズに。サンプルとして手許に集めたディスク用のケースを眺め続けて、たぶん二ヶ月近くになり、こうなると、優柔不断と云うより馬鹿者である。

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届けて回る ―アルマイトの栞 vol.127

どうにかまとめた半村良さん関連の映像を、協力してくれた方々に渡して回っている。全員に手渡しするのはどうにも難しく、申し訳無いです。「手渡し」を口実に遠方へ出掛けたい気持ちもあるものの、出向けるのは近所までで、むしろ発送作業が多くなり、手紙を添えてディスクを梱包し、せっせと送っている。何かの納品のような雰囲気だが、納品作業にしては効率の悪い自分で、「まとめて発送」ができないらしい。どれだけ郵便局へ往復すれば気が済むのか。自分は「郵便局ファン」なのか。自ら配達に回りたい欲求の現れとも思うが、自分は「郵便配達夫シュヴァル」のようになる恐れもある。「配達中に小石拾いに熱中し、小石で宮殿を建て始める」。それはマズイと思う。

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