Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

大きな見落とし ―アルマイトの栞 vol.180

目からウロコが落ちたと云うか、愕然としたと云うか、まあ、ともかく「そうだったのか」と唖然とする他なかったのは、吉田戦車さんの『おかゆネコ 1 』の第13話である。喋るうえに、様々な粥を作っては飼い主たちに振る舞うネコが主人公なのだが、その第13話は「芋粥」だ。芥川龍之介の『芋粥』に描写される芋粥を作るわけで、詳細に記された『おかゆネコ』のレシピを見て、いまさらながら「そうだったのか」と、まるで宇宙の真理でも啓示された者のように慄然とした理由は、自分が芥川の『芋粥』を十代の頃から何度も読んだにもかかわらず、重要な事実を見落としていたからだ。芋粥には、米が入っていない。

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頼れぬ記憶 ―アルマイトの栞 vol.179

自分の描きたい絵を、好き勝手に気の向いた時だけ描いて生きていければ、それ以上の幸福はないと思っており、それで自分の人生は充分なのだが、現実とは甘美なものではないらしく、「ひょっとこ踊りの絵を明日中に」などと頼まれる。よりによって「ひょっとこ」である。記憶だけを頼りに描くと、ナンシー関さんが雑誌の読者投稿企画として主宰した『記憶スケッチアカデミー』の投稿みたいな絵になる。「お題:にわとり」の回では、四本足のニワトリを描いてしまう投稿者が続出し、人の記憶とは、そんなものらしいが、「ひょっとこ踊り」は更に難しい。なにせ、身近に「ひょっとこ踊りの人」が居ないのだから。

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時間が経つ ―アルマイトの栞 vol.178

ベスト盤のアルバムを買うのは、いったい何年ぶりだろう。と、自分でも判らないことを他人に問うても判るわけはないのだが。ともかく、買ってしまったのだ、「毛皮のマリーズ」のベスト盤『MARIES MANIA 』を。しかも、初回限定盤を狙って先行予約までする、自分でも希有な行動だ。初回限定盤にはDVDが同封され、二枚組のCDと合わせて全42曲の収録となり、これらを順繰りに聴いたり視たり、ときには部分的に聴いたり視たりなどしておれば、アッと云う間に三時間くらいは経過し、時計を目にしては驚き、竜宮城に居るのかと思いこそすれ、「私は 人生複雑骨折」などと唄う曲が流れるのは、竜宮城なのか?。

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調べもの迷宮 ―アルマイトの栞 vol.177

ほんの5秒ほど途絶えた雑談を、唐突に「19世紀のクリミア戦争は」と、前後の脈略の無い話題に変える知人が居て、ナニゴトかと思い、しかし彼の口から「ボスフォラス海峡の」と発せられたとき、自分のアタマには小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』が現れてしまい、それは物語の冒頭の数行目に「ボスフォラス以東に只一つしかないと云われる降矢木家の建物が」と書かれるからで、自分が初めて「ボスフォラス」の地名を知ったのは『黒死館殺人事件』だったゆえに、自分にとっては「ボスフォラス=黒死館殺人事件」なのであって、思い出したからには再読したい衝動に駆られ、知人の話が、申し訳無いことに、聞こえなくなった。

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終演後にチェック ―アルマイトの栞 vol.176

慌ただしいのか余裕なのか自分でもハッキリ判らないまま、鈴木一琥さんのダンス公演『3.10 10万人のことば』は無事に終演した。御来場頂いた皆さま、ありがとうございました。それにしても、やはり、慌ただしかったのか余裕だったのか不明で、しかし例年のとおり公演で使った音源が耳から離れず、と云うことは、やはり何度も繰り返し音源を聴いたらしく、自分の耳が「3.10専用」みたいな設定変更をされてやしないかと案じ、「耳のサウンドチェック」をすべきかと考え、ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』を聴いた。劇場のサウンドチェックでは定番のアルバムで、その理由は、よく知らない。

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