大きな見落とし ―アルマイトの栞 vol.180
目からウロコが落ちたと云うか、愕然としたと云うか、まあ、ともかく「そうだったのか」と唖然とする他なかったのは、吉田戦車さんの『おかゆネコ 1
』の第13話である。喋るうえに、様々な粥を作っては飼い主たちに振る舞うネコが主人公なのだが、その第13話は「芋粥」だ。芥川龍之介の『芋粥』に描写される芋粥を作るわけで、詳細に記された『おかゆネコ』のレシピを見て、いまさらながら「そうだったのか」と、まるで宇宙の真理でも啓示された者のように慄然とした理由は、自分が芥川の『芋粥』を十代の頃から何度も読んだにもかかわらず、重要な事実を見落としていたからだ。芋粥には、米が入っていない。