Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

作品名は罠なのか ―アルマイトの栞 vol.104

110722.jpg ある知人が云った。「半村良?。懐かしいなあ、かなり読んだよ。ほら、ナントカ伝説ってやつ」。そして今さら気付く。作品名に「伝説」が付くものだけでも随分な数があるのだ。半村良オフィシャルサイトで「半村良の仕事」を見て頂ければ判るが、「ナントカ伝説」ではどの作品だか全く見当が付かない。仕方が無いので自分が憶えている限り「伝説」の付く作品名を挙げると、相手はむしろ混乱し、その挙げ句に当の本人が思い出したかった作品は『妖星伝』だったりする。ちなみに、「伝」で終わる作品名も複数ある。実のところ、半村さん公式ツイッターの日々更新を目的に幾つもの作品を立て続けに読んだ自分が、混乱している。

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年表も課題図書の夏 ―アルマイトの栞 vol.103

家政学院の4年生数名と卒業研究の話をしていたら、それぞれにテーマこそ異なるが、「そのテーマで年表を作ったほうが好いのではないか」と云う点が一致した。そうなると、テーマ別の年表に並行して一般史の年表が添えてあれば更に面白い筈だと、学生を煽ってしまう。学生からしてみれば、つくづく面倒なことを思いつく教員である。そして先ずは自分で年表本を買った。高校教材としても定番の吉川弘文館『日本史年表・地図』と『世界史年表・地図』を買い、つい目に触れた山川出版社『詳説 日本史図録』も加えてしまった。「AB版360頁フルカラー、890円」に釣られたのだ。これも定番教材だが、昨今は写真の刷り上がりが綺麗で、これが教材なら自分も落描きを思いとどまる。

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気になる登場人物 ―アルマイトの栞 vol.102

たかだか180ページ程度の薄い文庫本を、どうかと思うほど時間を掛けて読んだ。いつ自宅の書棚に現れたのか定かでないマイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』を、なんとなく鞄に入れたのは、たぶん今年の初めだ。半村良さん公式ツイッターのための半村作品読破作業や、それ以外の「読まなければいけない本」「読まなくてもいい本」の併読に紛れて、驚くほどノロノロと読んでいた。この本も、とくにいま読む必要はないが、なぜかそう云うものに限って熟読する自分である。本を持たずに出掛けた先で時間潰しに迫られると、珈琲店のレシートすら熟読してしまい、釣り銭をくれた店員の担当者番号に見入ったりする。十ケタの数字だ。総勢で十億人規模の店員が居るのだろうか。

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押上の宇宙人のとなり ―アルマイトの栞 vol.101

鈴木一琥さんの次のダンス公演『Voices of Dragon ~龍の声~』の打ち合わせで出掛けた先は押上で、地下鉄の駅から地上へ出たら、高さ634mの鉄塔が突き刺さっているわけである。東京の下町に、異星人たちの乗った母船が何かの手違いで墜ちて刺さって身動きが取れなくなったのじゃないかと云う光景で、申し訳無いけれど、笑った。遙か彼方に輝く恒星まで、当面は帰れそうにない雰囲気だ。そうなると、困っている異星人を下町の住人たちが助け始めるのではないかと思うわけで、それは半村良さんの『となりの宇宙人』そのままの展開である。「宇宙人は冷奴をひとくち口に入れて首をかしげる」。それはそうだろう。続きが気になる方は河出文庫『となりの宇宙人 』で読んで下さい。

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前触れの無いSF ―アルマイトの栞 vol.100

結晶世界 とりたてて疑問を抱くことなく読んでいる半村良さんのSFだが、そこから半村さん公式ツイッターへ掲載するネタを拾ってリスト化し、後日そのフレーズだけを見返すと、描写された光景が妙に気になる。「宇宙人は箸を置いた」。どんな光景を思い浮かべるべきだろうか。自分は今のところ、宇宙人を見たことはないのだ。何食わぬ貌で作者が描写する光景の大半を、実は誰も見たことがないのがSF小説かもしれず、とくに海外SFの邦訳を読むとその印象が強くなる。J・G・バラードの『結晶世界』に描かれた光景などはどうすれば好いだろうか。「色彩豊かな甲冑のような彩光は消え、ほのかな琥珀色の輝きが樹から樹へと動き、金属片で飾られたような地表が翳っている」。友人からのメールだったら心配になる。

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