この玉川上水 ―アルマイトの栞 vol.206
「この玉川上水の中に はいらないで ください。」と書かれた看板が存在するからには、どこかに入っても構わない「その玉川上水」だとか、入っても構わないけれど泳いではいけない「あの玉川上水」だとかの様々な「玉川上水」が存在するのではないか。それとも、この看板の文言は、目の前の水の流れが「神田上水」でもなければ「善福寺川」でもなく、他ならぬ「これこそ玉川上水だ」と、それとなく強調しているのかもしれず、誰かが書き加えた「学生マナーよく」の一文は、この文言が近隣の学生への注意だと補足しているわけだが、近隣には武蔵野美術大学しかないので、ムサ美の学生が玉川上水に入りたがるのだ。