小説バンド ―アルマイトの栞 vol.134
だしぬけに、何の脈略もなく、しかも一人で部屋の片付けをしているときに、「今も『人間椅子』ってバンドは活動してるのだろうか」と思う自分が、心配である。どこから舞い降りてきた疑問なのか判らないまま、片付けを放り出し、別冊太陽『日本のロック50’s~90’s』を開いた。彼らが音楽的に、どう位置付けられていたかを思い出せなかったからだ。本の殆ど最後の、'90年前後のページに小さな写真付きで、『人間椅子』の短い解説がある。「江戸川乱歩の小説を題材としたおどろおどろしいハード・ロック・バンド」。それはそうなのだが、もう少し音楽性に触れたらどうなのか。『人間椅子』と聞いて、乱歩の短編以外に心当たりのある者が大勢居るなら、不安だ。



自宅のTVや電話、ネットの回線仕様を変えねばならず、業者の担当員二人が来て機材やケーブルの交換をした。二人のうち一人は「喋り担当」らしく、終始その喋りに引き留められ、作業は終わり、何をどうしたか見そびれた。見られたら困る作業なのか。作業中の相方は鶴の姿にでもなるのか。「パソコンとかの繋ぎ替えも簡単っ!」と喋り担当が笑い、二人は帰った。翌朝、ネットの接続トラブル発生である。初めて自分の目でケーブルの接続状況を見る。何がどこに繋がっているのか、目眩のする光景が現れた。業者へ電話し、受話器を肩で挟んで説明を聴きつつケーブルの抜き差しをしていたら、電話線を抜いてしまった。こうして人は孤立無援になる。
