Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

歌われている場所 ―アルマイトの栞 vol.82

頼まれた原稿が行き詰まって、と云うか、一字も書き出すことが出来ず、考えるばかりの状況に陥り、そんな時は全く関係の無いことをしてアタマの中を一回カラッポにしたほうが好いから、ボンヤリと寝っ転がって何時間も音楽を聴いていた。行き詰まったコトバを追い払うために、インストではなく、歌詞のハッキリしたものばかりを聴いたら、歌われているコトバがいつもより気になった。歌詞に対して「その場所はいったいどこだ」と今さら思ったりするわけである。「湾岸道路」「雨のエア・ポート」と歌われているだけで勝手に羽田空港を想像して何年も聴いていた曲だが、特定の地名が歌詞に織り込まれているわけではない。新潟空港を思い浮かべたとしても、咎められる理由は無い。ムーンライダーズの『モダーン・ラヴァーズ』の歌詞だ。

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半村良さんのSF ―アルマイトの栞 vol.81

2002年に68歳で亡くなった作家の半村良さんに関わる仕事が舞い込んだ。舞い込んだのは好いのだが、半村作品は小学生の頃に『戦国自衛隊』を読んだだけである。それはいくらなんでもマズイ気がした。「半村良」と云えば「伝奇SFのジャンルを確立した作家」と、文学史めいた答えは出て来るものの、自分でも不思議なことに殆ど読まなかった。それでともかく手始めに、'74年発表の『不可触領域』を買って読んだ。「この時代の香りはなんだ」と思ったのが第一印象である。恋人同士が乗っている車はシボレーで、山道をドライブすればたいてい霧が出て、迷子の先は必ず異界だ。極めて'70年代の香りがする日本SFだった。

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SFと遊びと人間 ―アルマイトの栞 vol.80

レンタルDVDで旧いSF映画ばかり借りて観て居た。新しい作品でも30年ほど前のもので、どれも「21世紀の未来」を描いた作品ばかり選んでしまった。そこには決まって人間より優れた知性として振る舞う人工知能やアンドロイドが登場するが、ヤツらは人間と必ずのようにチェスをする。そして当然のごとく人間に勝つわけで、「またあなたの負けです」といきなり宣言し、のみならず解説を加えたがる性格らしい。「あなたがビショップでクイーンを取る。そのビショップを私がナイトで取ったらチェックメイト」。ハッタリだったりしないかと疑った。画面を一時停止にして盤面を観察し始めた。翌日の夜、素直に降参した。しかし、どうしてこの種のSFでは人工知能が人間相手にやたらとチェスをするのか。麻雀ではいけないのか。

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「LJ」な仕事 ―アルマイトの栞 vol.79

舞台照明を頼まれたシャンソンのコンサートは見事なまでにぶっつけ本番の照明だった。本番一週間前のリハーサルは「リハーサル」と呼ぶのも憚られるもので、結局は本番当日の、これまた中途半端なリハーサルで照明を考えた。いや、「考えた」と表現することすら疑わしい。まちまちな衣装を着た三十数名が出演順に舞台上で唄うことじたいはリハとして当然だが、本番の開場時間を考えると全員が持ち歌をフルコーラスで唄う時間は無い。歌詞が3番まであろうとリハでは1番だけ唄って終わりである。一人の持ち時間はせいぜい1分強だったろうか。その1分間でそれぞれの曲の照明パターンを即興で作った。まるでイメージ心理テストである。

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「解散」出来ない者たち ―アルマイトの栞 vol.78

あのバンドはまだ活動しているのだろうかと、ふとした拍子に誰かが話題にする状況はありがちなことだが、たいていの場合、居合わせた顔ぶれの中に明確な情報を持っている者は居ない。頼りない憶測が飛び交って、真相はハッキリせず、別の話題になり、翌日になればそんな話題が出たことすら忘れている。「音楽バンドのその後」は、労力を費やしてまで知りたいコトではないものの、気にもなるコトの典型である。だから『バンド臨終図巻』なんて本が出れば買ってしまうのは仕方が無い。'60年代から2009年までの「古今東西のバンド」の解散事情が判る本だ。速水健朗氏をはじめ5人の共著だが、この人たちが居る場で「あのバンドは・・・」と口走ったら朝まで帰らせてくれないのではと不安になる。

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