作業の手前で ―アルマイトの栞 vol.156
物事を先延ばしする口実は、不思議なほど次々と思い付けるもので、「つい横溝正史の『八つ墓村』を読み耽ってしまい」とかが一例である。理不尽である。理不尽だが、事実なのだから仕方が無い。つい、読み耽ってしまったのだ、『八つ墓村』を。すると当然のように次の口実が「市川崑監督、豊川悦司主演の映画『八つ墓村』を二泊三日でレンタルしてしまい、何せ二泊三日なら旧作100円だったし、だから急いで観ないといけなくて」になり、そして「原作と映画で異なる箇所の確認をしたい、何せ原作を読み耽った直後に映画を観たのだから」となって再び本を開き、やらなければいけない作業は何も進まない。