喋りを記録したならば ―アルマイトの栞 vol.129
漠然と「記録」の名目で撮った気もする映像を、キチンとまとめたいと云う話が出た。「記録」と称して撮影された映像は、えてして誰も視ない。写真以上に、誰も視ない。だから、この話がデザイナーのKさんや、撮影してくれた映像作家の大津伴絵さんから出たことは嬉しい。それは某氏のインタビューや対談映像で、つまり「喋り」だ。それを面白く残す手法を三人で話していたら、平凡社の東洋文庫シリーズにある『唾玉集(だぎょくしゅう)』を思い出した。明治30年頃に、様々な職業の古老に取材した話を、口調もそのままに文字にしている。老刑事が語る。「それァ泥棒にも、一種の病気で他人の物が只何となく欲しくッて盗人をする奴もある」。奇書に相違ない。