Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

色の残し方 ―アルマイトの栞 vol.121

鈴木一琥さんのダンス公演『3.10』はどうにか終演。御来場頂いた皆さま、ありがとうございました。それにしても、照明の色が気付けば赤系統ばかりになっていた。「意識的に無意識」な照明プランを作ったら、そのようなことになった。どうも、放っておくと自分は赤系の色を選ぶ傾向にあるらしいのだが、『3.10』公演の一週間ほど前に映像作家のOさんと一緒に作業した映像編集が影響したような気もする。半村良さんの作品にちなむ場所を歩いて撮影した映像をコラージュ風に編集することを試みる中で、赤系統の色だけを残すシーンを混ぜてみたりする実験を延々と繰り返していたのだ。気付かぬうちに映り込んでいた派手なピンク色の家がいきなり目立ったりする。どんな趣味の家なのか。

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希望の装備 ―アルマイトの栞 vol.120

公演本番の一週間前になって告知めいたことを書くのもどうかと思うが、今年もTetra Logic Studioは鈴木一琥さんのダンス公演『3.10 10万人のことば』の舞台照明を担当します。この公演の照明を担当するのは今年が三回目だ。会場となるギャラリー・エフのサイトの公演案内には昨年の舞台写真が掲載されて居り、写真家のダイトウノウケンさん撮影のカラー写真を最初に見たとき、驚くほど美しいその光景に、多重露光の写真なのかと思ったが、どうやらそれは自分たちが作った明かりで、自分たちの手掛けた照明を一年後に見て自分で感動すると云う、えらくマヌケな状況である。見えないのですよ、公演中の舞台が、自分の作業位置からは。

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リアルの方向 ―アルマイトの栞 vol.119

身近にあるだろう音を録って編集中の映像に入れようと思ったが、さもない筈のその音が意外と見付からない。それで、いっそのことシンセサイザーでその音を作ってしまおうと考えたものの、自分の所有しているシンセはあまりに旧く、音声ファイルに変換する作業が厄介である。どうするべきかと悩んでいたら、ネット上にフリーウェアのシンセソフトを見付けた。アナログシンセのシミュレータだ。目前の作業とは無関係に、ときめいた。CGで再現された操作パネルの材質感のリアルさはなんだ。そこまで必要なのか。材質感はシンセの本質ではないが、「リアル」を追求するのがシミュレータの本分だ。きっと担当デザイナーが口走ったのである。「景気付け、景気付け」。

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コラボからマニアックへ ―アルマイトの栞 vol.118

妖精物語からSFへ 古書店の文庫の棚で『妖精物語からSFへ』と書かれた背表紙に目が留まった。にわかに意味の解らない書名だが、むしろそれゆえなのか、手に取ってしまった。よく見ると、著者はロジェ・カイヨワだ。『遊びと人間』で有名な人だ。と、書いて気付いたが、他の著作はよく知らない。「カイヨワ」と聞けば、条件反射のように『遊びと人間』がアタマの中に飛び出して来るが、その一冊しか著書がないわけではあるまい。そもそも、カイヨワに対するそんな条件反射を、いったいどこで植え付けられたのか。まるでカイヨワが「一発屋」みたいじゃないか。しかし、偉そうな口を利けた自分ではなく、『妖精物語からSFへ』の著者近影で初めてカイヨワの顔を見た。フランス人っぽい。それはそうだろう。

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当てはまる音 ―アルマイトの栞 vol.117

映像作家のOさんの協力を得て昨年から撮り溜めてきた映像を、そろそろどのように編集してまとめるのか考えねばならず、そんなことにボンヤリとアタマを巡らせていたら、「一曲でいいから何か音楽を入れたい」と思ってしまった。自分で自分のクビを絞めることばかり思い付く、難儀なアタマである。しかし、「何か一曲」と思いはしたものの、具体的な曲のジャンルすら定かではなく、と云うことは、全ての音楽ジャンルが候補になり得るわけで、それは困ったことだ。旨く合いそうな曲調を偶然にでも気付かないかと考え、ともかく聴き始めたのは、松本隆さん作詞の曲ばかりを集めた7枚組CDボックス『風街図鑑』だ。古いアイドル歌謡を聴きたくなっただけなのじゃないか。

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