Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

はたらく音楽 ―アルマイトの栞 vol.84

向島の中小工場で機械の音を録ってダンス公演の音楽を作りたいと鈴木一琥さんが相談してきた。公演会場も工場。11月本番。急な話だ。友人の音楽家タニモト・タクに援護要請。この種の音楽作りを面白がって付き合ってくれる奇特な友人だ。タクと会い、「工場の音楽」について話をすると記憶の扉が開いた。「Coldcutの『Timber』って曲があったよね」。はい、ありました。YouTubeにPVの動画もありました。まさに「労働の音」の集積だが、映像の2分過ぎに一瞬現れる緑色の動物はなんだ?。働き者のカエルか?。

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環太平洋と鈴木一琥 ―アルマイトの栞 vol.83

ダンサーの鈴木一琥さんが、新しいダンス公演のシリーズ企画を目論見始めて、その相談などを兼ねて一琥さんと頻繁に会っている。企画のタイトルはまだ仮だが、『Voices of Dragon ~龍の声~』となっている。日本の古い舟歌や木遣り、そこにマーシャル諸島辺りの舟歌をはじめとする音楽要素も加えていきたいと一琥さんが語ったとき、「マーシャル諸島ってどのへんだったろうか」と考え、漠然と「南洋」くらいのことしか思い付かなかった。「地理」はずっと苦手科目である。調べると「南洋群島の東部を占める島嶼群」とあり、更に「ミクロネシア連邦の東、キリバスの北に位置する」とあって、ますます解らなくなってしまった。「ニューギニアは近所でしょうか」と思ったのは、南洋をイメージすると、なぜか諸星大二郎さんの名作『マッドメン』がアタマの中に浮かんでしまうからだ。その舞台がニューギニアなのだが、それだけで「南洋」を一括りにイメージする自分をどうかと思う。

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歌われている場所 ―アルマイトの栞 vol.82

頼まれた原稿が行き詰まって、と云うか、一字も書き出すことが出来ず、考えるばかりの状況に陥り、そんな時は全く関係の無いことをしてアタマの中を一回カラッポにしたほうが好いから、ボンヤリと寝っ転がって何時間も音楽を聴いていた。行き詰まったコトバを追い払うために、インストではなく、歌詞のハッキリしたものばかりを聴いたら、歌われているコトバがいつもより気になった。歌詞に対して「その場所はいったいどこだ」と今さら思ったりするわけである。「湾岸道路」「雨のエア・ポート」と歌われているだけで勝手に羽田空港を想像して何年も聴いていた曲だが、特定の地名が歌詞に織り込まれているわけではない。新潟空港を思い浮かべたとしても、咎められる理由は無い。ムーンライダーズの『モダーン・ラヴァーズ』の歌詞だ。

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半村良さんのSF ―アルマイトの栞 vol.81

2002年に68歳で亡くなった作家の半村良さんに関わる仕事が舞い込んだ。舞い込んだのは好いのだが、半村作品は小学生の頃に『戦国自衛隊』を読んだだけである。それはいくらなんでもマズイ気がした。「半村良」と云えば「伝奇SFのジャンルを確立した作家」と、文学史めいた答えは出て来るものの、自分でも不思議なことに殆ど読まなかった。それでともかく手始めに、'74年発表の『不可触領域』を買って読んだ。「この時代の香りはなんだ」と思ったのが第一印象である。恋人同士が乗っている車はシボレーで、山道をドライブすればたいてい霧が出て、迷子の先は必ず異界だ。極めて'70年代の香りがする日本SFだった。

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SFと遊びと人間 ―アルマイトの栞 vol.80

レンタルDVDで旧いSF映画ばかり借りて観て居た。新しい作品でも30年ほど前のもので、どれも「21世紀の未来」を描いた作品ばかり選んでしまった。そこには決まって人間より優れた知性として振る舞う人工知能やアンドロイドが登場するが、ヤツらは人間と必ずのようにチェスをする。そして当然のごとく人間に勝つわけで、「またあなたの負けです」といきなり宣言し、のみならず解説を加えたがる性格らしい。「あなたがビショップでクイーンを取る。そのビショップを私がナイトで取ったらチェックメイト」。ハッタリだったりしないかと疑った。画面を一時停止にして盤面を観察し始めた。翌日の夜、素直に降参した。しかし、どうしてこの種のSFでは人工知能が人間相手にやたらとチェスをするのか。麻雀ではいけないのか。

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