つくらない時代からこそ、新しくつくるものはクリエイティブでなくてはならないし、生み出すという視点をより深めなくてはならない。
坂口、浦部、竹本が委員として参加している日本建築学会文化施設小委員会企画編集の「劇場空間への誘い」(日本建築学会編 鹿島出版会 2010.10)が10月7日頃に書店に並びます。先月富山大学で行われた文化施設小委員会主催の日本建築学会大会のPD「創造都市時代における新しい公共空間の可能性」に続いて、文化施設小委員会としても劇場空間の新たな方向性を見いだす目玉プロジェクトの一つである。個人的にも昨年企画に関わった「建築ノートEXTRA2」も含めた、劇場を都市の公共空間と捉えて、その可能性と計画論を考える一連の機会としても刺激的であった。
本書の内容は、歴史、実践、未来像の3つのフェーズに分かれている。
第一章は、日本の劇場の機能、デザイン、思想の歴史的な系譜とその意義を劇場計画者、プロデューサー、建築評論家、文化政策の研究者が鋭く切り込む。
第二章は、興味深い劇場プロジェクトを手がける設計者、計画者の論考と、先駆的な公共劇場を劇場研究者のケーススタディー。
第三章は劇場空間の新たな領域とその可能性を建築家、アーティスト、プロデューサーのインタビューや劇場技術、現代演劇、都市と劇場に関するの論考と若手研究者による劇場空間の新たな戦略とデザインの可能性を考える座談会。
そしてこの三つの柱に加えて、劇場年表、創造活動拠点の取材レポート、劇場を語る参考文献リストも掲載されています。
坂口、浦部は本書の企画編集に加えて幾つかの論考の執筆やインタビュー、そして座談会にも参加しています。
昨年の10月にリニューアルオープンした東北大学百周年記念会館川内萩ホール(設計阿部仁史+小野田泰明+三菱地所+阿部仁史アトリエ)が新建築5月号に掲載されました。 50年以上に前に建設された既存の大学の講堂をリニューアルという形で国際会議とコンサートホールの機能を持つホールに転換するプロジェクトでした。 坂口は設計チームのステージコンサルティングとして備品選定を含む舞台機能全般に計画、設計に関わりました。
建築に関するメディアにおいて劇場の魅力が語られなくなって久しい。
恐らくは90年代の後半の新国立劇場の開館以降、幾つかのプロジェクトの紹介はあっても、劇場をメインとした特集や出版物は数えるほどだった。劇場そのものが以前と異なり創る時代ではなくなってきていることが大きいとは思うが、面白さを伝える切り口が少なかったことも理由の一つだろう。加えて不況だとか縮小するとか大きな逆風にまみれているのが、2009年の日本だ。