21世紀に劇場を語る。 ―発見する場所14
建築に関するメディアにおいて劇場の魅力が語られなくなって久しい。
恐らくは90年代の後半の新国立劇場の開館以降、幾つかのプロジェクトの紹介はあっても、劇場をメインとした特集や出版物は数えるほどだった。劇場そのものが以前と異なり創る時代ではなくなってきていることが大きいとは思うが、面白さを伝える切り口が少なかったことも理由の一つだろう。加えて不況だとか縮小するとか大きな逆風にまみれているのが、2009年の日本だ。
そんな最中幾つかの劇場に関する出版物の企画に関わっている。90年代や80年代の劇場を扱った本や雑誌の特集等を改めて見直している。「演劇のための空間
」(SD9404)、「21世紀の地域劇場
」(清水裕之 鹿島出版会)、「演劇の劇場
」(建築思潮研究所)・・・。
学生時代に読んだときは面白さに引かれ、専門的な勉強をはじめた頃はいろいろな知に触れ、具体的なプロジェクトに関わった時は手引書として手にとったことを思い起こす。今回は本や雑誌の企画を行うという立場で足跡を辿ってみた。
風も吹いていたのだろうが、充填されているエネルギーの密度と大きさに改めて驚かされる。関わった人達の体温の高さが滲み出ている。これが率直な感想だ。もう語ることは何も無いような気がする一方、まだ残されているとも思う。自分の身の回りを見渡して、何度かフィールドワークを続ける中で、幾つかのキーワードが浮かび上がってくる。
身体、都市、境界、空間•••。そこからまた足跡を読み返し、劇場の地図の中へのプロットを繰り返す。
いろいろな人の知恵にも恵まれて試行錯誤のなか少しづつだが、具体化しつつある。
その一つが「建築ノートEXTRA UNITED PROJECT FILE (2) 」(SEIBUNDO Mook)。国内外の最新劇場プロジェクトや特集が組まれ4月中旬から下旬に書店に並ぶ予定。本屋の書棚で見かけた際には手にとってご一読頂ければ幸いです。閉じることで世界を獲得した近代劇場とは異なる21世紀の劇場の可能性が何処にあるか。そのヒントの種を集積する試みの一つであり、次への布石となるような契機としたい。
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