Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

漫画の妄想 ―アルマイトの栞 vol.116

2012年もTetra Logic Studioを宜しくお願いします。そして自分は年末に風邪をひき、半・寝正月だった。中途半端に外出して風邪をこじらせては寝込んだ。寝込んで、江戸川乱歩の『パノラマ島綺譚』や『芋虫』を読み耽っていた。風邪で寝込んだときに読む本としてはいかがなものかと、自分で思う。どちらの作品も、エンターブレインから出版されている丸尾末広さん脚色・作画の漫画版だ。ただでさえ耽美な原作だが、丸尾末広さんがそれを絵にすると、「耽美」の度合いも尋常ではなくなる。画集を眺めるように一コマ一コマに見入り、細部まで観察してしまう。「丸尾さんは一コマ描くのに何時間を費やしているのか」などと、どうでもいいことが無闇に気になったりする。

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再生に捕まる ―アルマイトの栞 vol.115

どう云うわけか、やたらとDVDを手渡されている。その大半は、映像作家のOさんから渡されたもので、Oさんが付き合ってくれている仕事で撮影してもらった映像だ。舞台公演の記録映像もあれば、インタビュー取材の映像もあり、半村良さんの作品に登場する場所を二人で歩いてみた際の映像もある。いつの間にか机の上でDVDが増殖していた。Oさんと会うたびに増える。これから編集作業を進めていく映像ばかりで、と云うことは、きちんとチェックしながら観ないといけないわけだ。観るスピードが追い付かない。Oさんがコッソリと「遊び心」エフェクトを映像中に仕掛ける人だと気付いた時、「早送りするな」とOさんに耳許で囁かれた思いがした。

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消す方法 ―アルマイトの栞 vol.114

西新宿の界隈を、映像作家のOさんと一緒にカメラを持って歩き回った。半村良さんの『高層街』の物語に沿って歩き回ったのだ。『高層街』は1980年11月の西新宿を舞台にして始まる。半村さん本人と思しき小説家が、開業二ヶ月後のハイアットホテルに長逗留して原稿を書いている状況設定で、なにせ表題が『高層街』だから、ハイアットから見える高層ビルの名前が目白押しに登場する。ハイアットを扇の要に、北東方向の野村ビルから時計回りに南のNSビルまで、8棟のビル名が並ぶ。その光景を、作品と同じように撮影してみようと出掛けたわけだが、困った。ヒマな人は地図を見て欲しい。高さ243mの都庁が邪魔だ。コクーンタワーはセンタービルの向こう側なので、見えないことにした。

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読了できない場合 ―アルマイトの栞 vol.113

河出書房から刊行された文藝別冊『追悼 小松左京』は、執筆陣が驚くほど豪華だ。つい買ってしまうのは仕方が無いが、そもそも自分はそれほど小松左京さんの作品を読んでいない。むしろ、『日本沈没』を読み始めては途中で挫折した経験が十代の頃に幾度もある。しかも、なぜか必ず上下二巻の上巻まで読んで挫折するのだ。だから、『日本沈没』の上巻のラストシーンだけは無闇にハッキリと記憶している。何の自慢にもなりはしない。さいとう・たかをさんが劇画化した『日本沈没』は全三巻だったが、これですら二巻あたりで挫折した。原作の上巻ラストと同じ箇所だった。なにか、してやられたような気分になったが、つまり自分はいまだにベストセラー『日本沈没』の結末を知らないのである。

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ロケハンの人数 ―アルマイトの栞 vol.112

「ロケハン」と呼ばれる行為を目的に出掛ける場合、それはいったい何人くらいで出掛けるのが適正なのだろうかと考えながら、カメラを片手に一人で出掛けた。「それは散歩だよ」と云われそうでもあり、しかしそのコトバを否定できる程の強い反証材料も無い。「お散歩ですか?」と誰かに声を掛けられたなら、「はい」と答えておくのが無難と云うものだ。しかし、散歩中の者が、自分とは縁もゆかりもない見ず知らずのマンションにカメラを向けたりするだろうか。それは「不審者」なのではないかと、ファインダを覗きながら思った。咄嗟にアタマに浮かんだのは、「古いマンションを観て全国を歩くのが趣味なんですよ」と云うデタラメな台詞だ。

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