Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

発掘への道 ―アルマイトの栞 vol.223

全くもって思いもしなかった研究テーマも在るものだと、つい唸らざるを得なかったのは、『共産テクノ ソ連編』なる書籍が刊行されると知ったときで、初めてタイトルを耳にした際には、「協賛と提供」と聞き誤ったほどなのであって、つまり、それほど、盲点を突いたような研究テーマが「共産テクノ」であり、そんなテーマに取り組む著者の四方宏明さんは、自らを「音楽発掘家」と称しており、そんな肩書きすら初めて目にするわけで、その肩書きの意味するところは「あまり世に知られていない音楽を見つけては紹介する人」かと思うが、そう文字に書いてみて、ふと思った。ワタシも、それになりたい。

「音楽発掘家」を目指すならば、具体的には、どのような課題をクリアしていくべきなのか、それは、つまり本書『共産テクノ ソ連編』を構成する項目そのものに示されていると考えるのが妥当なので、順にページを繰ってみると、先ず最初に「ソビエト社会主義共和国連邦」の地図が掲載されており、この時点で既に自分にとっては難関になってしまい、ともかく、何が苦手かと云って、地理ほど苦手なものは無く、ソビエトどころか、日本の白地図に「都道府県名を記せ」でも、大勢の日本人を驚愕させるに充分な内容の解答を書く自信があり、世界地図に「国名を記せ」だったなら、大勢の地球人を驚愕させるに充分な内容の解答を書く自信があり、地球に詳しくなることが喫緊の課題だ。

そして、ソ連の地図の隣に掲載されているのは、ソビエト連邦の年表で、歴史については、地理に比べたら遙かに自分の関心が高いジャンルだから、あまり問題は無さそうに感じるが、掲載されている年表の最初の項目が「1917 二月革命、十月革命」で、ここに巨大な暗雲が立ちこめるような不安がよぎり、歴史の話題の中で、ロシア革命とフランス革命ほどワケの判らないモノは無いと常々考えており、まだフランス革命に関してなら、『ベルサイユのばら』と云う良質な参考書が存在するけれど、ロシア革命に関して、『クレムリンのゆり』とやら云うタイトルの作品が存在する話を一度も耳にしたことは無く、頼れるのは「資本論を読破した」と公言する少し気の触れた友人だけである。

『共産テクノ ソ連編』の本題に入る手前で、自分は「必修の一般教養科目」みたいな段階からして危ういことが明らかになってくるわけだが、ともかく自分にとって全く未知の「共産テクノ」の世界を、一刻も早く覗きたいから、本書に掲載された大量のアルバムジャケットを次々に眺め始めると、最も重要な点を見落としていたことに気付いた。図版に附されたキャプションの文字が、読めない。ロシア語を表記するキリル文字だらけなんである。しかし、本書の帯にも紹介されている「強制労働を課された事もある自称火星出身ソ連版Lady Gaga、ジャンナ・アグザラワ」が無闇に気になり、「ジャンナのためにもキリル文字を習得しよう」と、意味不明な情熱に駆られる春なのだった。

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