Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

南を揃えていく ―アルマイトの栞 vol.197

2015年もTetra Logic Studioを宜しくお願いします。どう考えても早々に二月の寒さだとしか思えず、ただでさえ寒いのは苦手なのに、大晦日に近づくほど自分は冬眠モードに陥りがちとなり、このままホンモノの二月に突入したらドンナ極寒が来るのかと脅え、どこか南国へ逃げたいのは山々だが、悲しいほど逃走資金が無く、自分に残された手段は大音量で南米の音楽を聴くことくらいなので、自室のCD棚から「セニョール・ココナッツ」のアルバム『プレイズ・クラフトワーク』を探し出した。ドイツのテクノバンド「クラフトワーク」の硬質な楽曲を軒並みラテン・アレンジでカヴァーした驚愕の一枚は、サンティアゴでの制作だ。もう気分はチリである。

とりわけ秀逸な一曲は『アウトバーン』で、クラフトワークのオリジナルでは曲の冒頭に、車のキーを回す音とイグニッション音が響き、エンジンが掛かってクラクションと共に軽快に走り去るフォルクスワーゲンだかの音が入るのだが、セニョール・ココナッツのアレンジは冒頭から極めて南米的である。エンジンが掛からないのだ。キーを回し、セルモーターが唸り始めたかと思うと止まってしまい、これを何度も繰り返してエンジンの掛かるような酷い中古車で、クラクションも純正品とは思えぬマヌケなラッパの音だ。オリジナルの曲に溢れる安定した疾走感と比べると、時速は25キロ前後で、たぶんマフラーも落ちそうでガタガタ鳴ってる。聴いてるだけで汗ばむ。

けれども、収録数15曲だから、南米の気分は1時間強で終わってしまい、繰り返し聴くにも限度があり、どうしたものかと悩み、思い付いた。ラテンアメリカ文学を読もう。自室の書棚の手前に岩波文庫版のボルヘス『伝奇集』が転がっていただけなのだが、こんな時こそアルゼンチン生まれの作家の小説を読むべきではないかと思って本を開けば、その「プロローグ」の末尾に「ブエノスアイレスにて」と書かれており、それだけで汗ばむ気分になろうと云うものだ。加えて、「読者は、その目的を知らないわけではないが、筆者の見るところ最後まで理解できない、ある犯罪の遂行と準備のすべてに立ち会うことになるだろう。」などと記されるので、南米の夜の悪夢まで満喫できてしまう。

こうなると、読書の小道具も「南」で揃えようと考え、せいぜい珈琲豆を「グァテマラ」とか「メキシコ」に変えるくらいにすれば好いものを、馬鹿者の自分なので、煙草を買う際に「アメリカンスピリット」を選んでしまい、なにせ米国ニューメキシコ州サンタフェなんて場所に本社を置く会社の銘柄であるうえ、箱に記された「ネイティブ・アメリカンが起源」の「400年以上もの歴史」を持つ煙草の製法を「守ろうと決意した」との文言を読み、「意気に感じた」と意味不明の感動を覚えもし、こんな調子で進むと、どこかの朝市へ出掛けてサボテンの鉢植えをまとめ買いなどするんじゃないかと自分を危ぶむものの、冷静に考えれば、それはあり得ない。朝市は寒いじゃないか。

雑記 | comments (0) | trackbacks (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

Comments

Comment Form

Trackbacks