間に挟んだ機材 ―アルマイトの栞 vol.193
いまとなっては相当に旧式なシンセサイザーやらの諸々の旧い電子楽器を音源として、Macで録音やミキシングなどをするためには、音源とMacの間に「インターフェイス」と呼ばれる機器を挟む必要があるので、それを貸してもらい、シンセやらを音声ケーブルでインターフェイスに接続し、そこからUSBケーブルでMacへ接続して音を録ったら、元の音とは驚くほど違う音が録音されていてナニゴトかと思い、音色も音程も、まるで身に覚えの無い奇怪な音が再生される。例えて云うなら、「ピアノの音色でド・レ・ミ」と入力したら「チャルメラの音色でファ・ラ・レ」なわけで、このインターフェイスは音痴ではないのか。
こんな作業に躍起となり始めた原因は、YouTube公開から一年の経った細田麻央さんの舞踏映像公演『galacta』だ。YouTubeの様子を久しぶりにコソッと覗いたら、知らぬ間に再生回数が1,000回を超えていてビックリし、自分たちで企てたコトとは云え、再生回数の伸びに大きな期待などしない軽い気持ちの、いわば「出来心」からの行いだったから、「再生回数1,107」なんて表示を見てしまったとき、「同級生を狙って仕掛けたイタズラの成果をコッソリ覗いたら校長先生が掛かってた」みたいな気分になって、慌てた。「早く続編を仕上げないと怒られる!」と焦り、そのための音作りに旧式な音源の動員を試みたら、借り物のインターフェイスが「音楽、苦手っす」だ、音響機器のクセに。
ひと様からタダで貸してもらった機材に難癖を付けてはイケナイのだけれど、振り返ってみれば、この機材を受け取った時点で怪しい雰囲気に満ちていた気がし、貸してくれたのは映像家の大津伴絵さんなのだが、このインターフェイスを持って来てくれたとき、確かに彼は独り言のように、こう云った。「これ、使い方がよく判らないんで、貸します」。明らかに奇妙な論理が展開されている。貸してくれる理由が、「使い方がよく判らないんで」だったのではないかと気付くわけで、すると、この論理の裏側には、「使い方をハッキリ突き止めて、教えろ」が隠れているに違いなく、さらに穿った見方をすれば、「アンタ、理工系でしょ」も隠れている。耳をふさぎたい。
申し訳ないことに、あまり探求心に満ちていない落ちこぼれの理工系の自分なもので、「このインターフェイスは音痴だ」と決め付け、ほとんど試行錯誤と呼べるようなことを何もせず、一応は、接続ケーブルを交換してみるくらいのことは試したけれど、これも確信があってのことではなく、漠然と「こんな場合は、ともかくケーブルを換えてみるものだ」と思っただけで、結局は解決に至らない。だが、旧式の音源を使いたい気持ちに変わりはないから、どうにかして旧いシンセの音をMacの中へ取り込もうと考え、ふと思い付いて、Skypeなどで使うMac本体の内蔵マイクの近くにシンセのスピーカを置いて録音してみた。なんか、OKだ。大津さんには「内蔵マイクがベストっす」とハッタリを教えよう。
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