Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

終わらなくする ―アルマイトの栞 vol.98

来年の春頃に、半村良さんの没後10年を記念して何かを画策しなければならず、その布石として半村良オフィシャルサイト公式ツイッターを始めたわけで、それらの日々の更新作業はどうにか続いているが、問題は来年の春に画策しなければいけない「何か」だ。舞台に関わる者としての「業」なのか、放っておくと自分のアタマはすぐに「舞台作品が作れないものか」と考え始める病的な思考回路である。ふと、『戦国自衛隊』を宝塚歌劇にしたらどのようなことになるだろうかと考えたが、「ふと」思っただけだ。タイムスリップに巻き込まれたシーンで20数名の自衛隊員が歌って踊る。誰がそんな舞台を観に行くのだ。

あくまで自分の知る限り、半村作品が舞台化された話を殆ど聞かない。例外は、怪談で有名な白石加代子さんが、御自身のライフワークとされている一人舞台のシリーズ『百物語』で、半村さんの短編怪談『箪笥』を上演したと云うことくらいだ。どうも半村作品は、舞台化するよりも映像化に向くものが多い。事実、TVドラマ化された作品は幾つかあり、『戦国自衛隊』は映画化されている。舞台化向きか映像化向きかの違いが何なのかは自分にもよく判らないが、少なくとも、土偶と埴輪が戦争をする半村作品『戸隠伝説』は、舞台作品向きではない。土偶と埴輪が戦を繰り広げる光景を舞台でやれば、どう考えても『おーい!はに丸オンステージ《死闘編》』のようなことになる。

しかし、半村作品が殆ど舞台化されていないことを考えれば、敢えてその作品の舞台化を試みることは「隙間産業」的に新機軸なのではないか。但し、その場合に慎重に検討するべきことは、上演空間の規模である。そもそも何人くらいの集客が望めるだろうかと考えたとき、半村さん公式ツイッターのフォロワー数に目が留まった。「あなたは198人にフォローされています」。反射的に世田谷パブリックシアターの小劇場シアタートラムを思い浮かべた。客席数218である。「198名で9割の席が埋まる」と考えたが、それは浅はかな計算だ。客席が9割埋まるのは一日だけで、しかも全員が同じ日に来場しなければ実現しない。だいいち、この「未知の198人」の所在は日本中に散らばっている。

それならば、日本全国規模で半村作品の舞台を訪ね回る『半村良の伝奇SF双六』でも作るか。観客参加型の全国規模ハプニング屋外企画である。参加者にはマス目の指示に従ってもらう。「京都から諏訪へテレポーテーションで移動する」。どうすればいいのだ。「深夜の国道8号を新潟から富山方面へ疾走する」はどうにかなりそうだ。しかし、次にサイコロを振って進んだマスが「境川で戦国時代にタイムスリップする(3回休み)」だと、その人は何をしたら好いのだろうか。そもそもゲームに戻るキッカケは何だ。「月面へテレポーテーションする」、「神奈川の地下で6千年の眠りにつく」、「地底の楽園を探しに行く」。誰も戻って来ないじゃないか。「アガリ」は極めて困難だ。だから優勝者への景品も豪華に「進呈!『太陽の世界』全18巻」と思うものの、これがまた未完だ。 どれ一つ終わりを許さない半村さん没後10年企画を勝手に妄想しただけである。本気にしないでください。

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