工作の出来なかった夏 ―アルマイトの栞 vol.53
気がつけば9月ではないか。最後に『アルマイトの栞』を更新したのは8月1日だった。何をしていたんだ、この一ヶ月以上。「わけのわからない忙しさだった」。そうとしか答えようが無い。せっかく「夏休みの工作に」と思って発売初日の7月30日を待ちわびて買った『大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル (Gakken Mook 別冊大人の科学マガジン)』はずっと「お預け」状態である。これが発売されるニュースを知った時から胸がドキワクしていたと云うのに。これで作った音を、どこかの劇場のフライングスピーカから大音量で鳴らして「サウンドチェック」なんてことは出来ないものだろうか。何かに使えると思うんだよ、これ。
それにしても、いろいろと人に会いに出かけることも多かったし、メールや電話やファクスも多かった夏だ。目を通さなければいけない資料の類もやたらに多くて、いま仕事場はモノが散乱している。つまり自分のアタマの中も散乱しているわけだ。実のところ、雑誌『STAGING』の連載原稿がちっとも書けていなくて、編集関係者の皆さんに迷惑を掛けているのです。監修者が編集者に迷惑を掛けてどうするのだ。ともかく「カンヅメ」状態になりたい気分なのだけど、なかなか旨く「カンヅメ」になれずにいる。今回のテーマがちょっと難しいので、構想段階でかなり悩んでしまい、いつものようにさっさと書けない。こんな場合は、えてして全く関係の無い本を読んだりすると好いアイデアが浮かぶものだと、久しぶりに安部公房の小説をいくつか電車の中で読んだ。『砂の女』はやっぱり面白かった。十代の頃には感じなかったことだけど、安部公房の作品はベケットと諸星大二郎を足したような面白さがある。そう云えば映画も観に行きたいのだが、時間が取れない。『デトロイト・メタル・シティ』を観たいんだよ。観に行こうと思った日に打ち合わせが入って、これも「お預け」のままである。
とは云え、Tetra Logic Studioにとっては好いことだ。仕事を頼んでくれる方々に支えられているのだと思う。いろんな仕事があって、こちらも初めての経験が多いけれど、それはそれでいい勉強になる。そんな「初めての経験」の中に、たとえば『川口百景』の企画もあるのだけど、こちらは9月1日に事前申し込みが始まり、いま刻々とその申し込みが送られてきている。僕らが担当している企画展示の内容も具体的な話を進めているけれど、なにか面白いインスタレーションを出来ないかと思う。鋳物のオブジェみたいなものを混ぜるのも好いかもしれない。公式サイトの中にあるスタッフブログ『ふぉと歩』も快調に更新が続いているので、皆さん、是非こちらも御覧ください。お薦めの撮影スポットも紹介されてます。川口市内にとどまらず、多くの方が応募してくださると嬉しいかぎりです。
そう云えば、まだ来年の話だけれど、劇団 黒テントの『玉手箱』が再演になりそうで、今度は旅公演だと連絡があった。6月の初演が好評だったようだ。ものすごく嬉しい。具体的な話はまだこれからだけど、初演とはまた違う『玉手箱』の舞台を創りたい。初演で試すことの出来なかったアイデアもいろいろある。これも今から愉しみだ。
そんなこんなの夏だった。愉しい工作はもうしばらくお預けかもしれないけれど、「犬は吠えるがキャラバンは進む」のである。
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