Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

癒しの音楽 ―アルマイトの栞 vol.34

好きなことばかりを仕事にして、やりたくないことは全て避けて通ってきたけれど、それじゃあ何のストレスも無いかと云えば嘘になる。まあ、何かしら世間のしがらみってやつで多少のストレスは溜まるのだ。そうするとそのストレスを解消する何かが必要になる。Macを相手に勝てないチェスをするのもその一つだ。TSUTAYAで落語のビデオを借りてくるのも好い。しかし癒される何かと云うと、どうも音楽だったりするんではないかと思うこの頃だ。とにかくね、近頃はホントに音楽で癒されてることが多いような気がするんです。

TITLe (タイトル)』って雑誌がこの11月号で「Coffee & Music」を特集している。「カフェで珈琲を飲みながら聴きたい音楽は?」ってことで、いろんな著名人がお薦めのアルバムを幾つか挙げている特集である。僕もかなり珈琲は好きだし、近所のカフェに毎日のように珈琲を飲みに行くから、この特集は興味深い。実際にその近所のカフェで鳴っている音楽にはかなり耳を集中させている。知らない曲も多いけれど、毎日のように通って居れば、その店で鳴っている曲の傾向で店のある種の雰囲気はわかる。店の雰囲気と云うよりオーナーの趣味がわかると云ったほうが正確かな。ともかく、間違っても「ハワイアン」を鳴らす店ではないと云うことはハッキリするわけだ。

ある親友の「天才詩人」が居て、彼はもう随分前に旧いレンガ造りの教会の塔のてっぺんに住んで居たことがあって、夜な夜なそこへ酒を持って遊びに行っていた。妙に天井が高くて小屋裏の木材が見える6畳より少し広い部屋で、照明は裸電球が二つぶら下がっているだけの空間だった。夜遅くに遊びに行くと、彼はその部屋でジャズとかトム・ウェイツのアルバムを聴きながら詩を書いていた。酔いどれ詩人が酔いどれ詩人の音楽を聴きながら詩を書いていたのだ。そして僕はその空間が好きだった。「ジャズバーみたいだよな」とか云ってたのである。しかし、昼間に行くとその雰囲気が無い。思うに、「夜」と「裸電球」と「音楽」がその空間を演出して居たのである。そしてトム・ウェイツをカッコイイと思ったのである。

いま音楽を聴くとき、一つの基準が僕の中にある。それは「自分の葬式で鳴らして欲しい音楽」だ。間違っても賛美歌だとか、ましてや読経の鳴る中で送られたくはない。そんな辛気くさい雰囲気の中では死にたくないのだ。それで、いま僕は「自分の葬式の曲」を探している。やっぱりさ、明るく手を振って「逝き」たいんだよ。これからの人生の中で候補曲は変わるかもしれないけれど、ともかくいまは『幸せハッピー』って曲だ。忌野清志郎が作詞で作曲は細野晴臣。オリジナルは坂本冬美が唄っていたけど、僕は細野さんと清志郎がデュエットしてるバージョンがもの凄く好きだ。自分の葬式ではこいつを鳴らして「出棺」が理想である。

チョット疲れている時とか、ついこの曲を聴いてしまう。いや、実はいまもこの曲を聴きながら文章を書いているのだ。何だかさ、意味もなく元気が出て、意味もなく「明日への希望」が持てたりするのである。そう考えると「音楽」ってのは偉大である。舞台を観たり、絵や彫刻を観たりして元気づけられたことって殆どないのではないか。音楽には何か得体の知れない癒しのエネルギーがあるように思う。だからこそ、自分の葬式で鳴らす音楽は一番の遺言として決めておきたいと思うこの頃なのである。

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