Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

クイズと探し物 ―アルマイトの栞 vol.221

とりたててクラシック音楽のファンではないのだけれど、クラシックのCDも多少は持っており、かなり久しぶりに『「タンホイザー」序曲 / ワーグナー名演集』を聴かなければいけないような事態になって、ともかく聴く必要があった曲は、冒頭に収録された『歌劇「さまよえるオランダ人」序曲』で、それを聴く原因を作ったのは、突然に届いた携帯メールである。「さまよえるオランダ人の曲だと思って聴きなおしたのだけど、どうやら違ったみたいで、一晩に亘って考え込んで、やっと思い出せました。さて、正解は何だったでしょうか?」。一見、相談か質問を装ったメールだが、どう考えても、クイズだ。

いきなり「さまよえるオランダ人」と云われても、その楽曲をそらんじる程のクラシックファンではないのだから、実際に聴いてみるよりなく、ふと思い出したのが『「タンホイザー」序曲 / ワーグナー名演集』だったわけで、しかし、そのCDが自室の中のどこにあるのかを完全に忘れており、「あのCDに、さまよえるオランダ人も収録されてた」と探し回り、おかげで、『甦る伝説のケチャ』なんてCDを掘り出し、見覚えはあるけれども、所有している理由が判らず、ついでに聴いてみようかと思ったが、どう間違っても「ケチャ」が「さまよえるオランダ人」の楽曲に似ているとは考えられないので、棚に戻し、更に棚を物色すると、トニー谷『さいざんす・マンボ』が現れ、論外である。

なかなか見つからない探し物に嫌気がさし、物色を中断してはボンヤリと珈琲を飲んだり煙草を吸ったりと自堕落なことを繰り返し、そうして数日目に、やっと『「タンホイザー」序曲 / ワーグナー名演集』を発見したのだが、その時点で疲れ果て、CDを発見したことに安堵し、再び自堕落な状態へと戻り、「さまよえるオランダ人」を聴いたのは、CDの発見から二日目の午後で、せっかくだからと、ヘッドフォンの爆音状態で聴き、この楽曲に似た曲を探し出せば、クイズの正解に至るに違いないとの目論見ではあるのだけれども、細かなパートの旋律にも注意を払って聴くと、ある小節で、似ている曲が思い浮かんだ。「勉強しまっせ 引っ越しのサカイ」と聞こえる。正解なわけはない。

そして、クイズの正解が記されたメールはとっくに届いていたのだが、悔しいので開封せず、クイズを考え続けたけれど、ついに降参し、出題から一ヶ月目に答えを開封した。「韃靼人の踊り」。誰もが旋律を知っているだろう有名な曲だ。それで口ずさんでみると、なぜか途中でABBAの「ダンシング・クイーン」になってしまい、曲の記憶が奇妙だと気付き、しかし「韃靼人の踊り」もCDを所有していたはずだと、次なる探し物に着手してみれば、またもやブツの所在がハッキリせず、棚を引っ掻き回してはボォっとして、更に何日も過ぎる阿呆ぶりだが、「さまよえるオランダ人」と「韃靼人の踊り」を比べるまで諦めるわけにはいかず、この事態は「さがしまわる半狂人の棚漁り」だと思う。

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