Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

視聴への路 ―アルマイトの栞 vol.212

録画したTV番組と買ったDVDは観られることなく埋もれていくのが、ことによると宇宙の真理だったりするのじゃないかと思うほど、HDレコーダの中には観ていない映像が溜まり、棚の上には未開封のDVDが積まれ、今年の4月1日リリースのDVD『"Don't Trust Ryohei Shima" TOUR 〈完全版〉 』の場合、発売前にAmazonで予約して、それどころか一刻も早く入手したい欲望から、つい「プライム会員登録」をクリックしてしまい、3,900円の年会費まで支払った自分はワンクリック詐欺に引っ掛かるタイプではないかと危ぶまれるのだが、ともかく、発売日の前日に届いたDVDは4ヶ月も未開封で、自分で自分を罵る。

ただ、この志磨遼平さんのライヴを収録した『"Don't Trust Ryohei Shima" TOUR〈完全版〉』を4ヶ月も観ないままで過ごしている理由には特別なものがあって、「観たい。観たいけど、観終わってしまうのがモッタイナイ」と云う、それはそれは悩ましい葛藤の中で悶々と過ごしていたら4ヶ月が経過していたのであり、志磨遼平さんに対する自分の熱烈なファン心理が、こんなケッタイな状況を作り出しているのに違い無く、このまま「愉しみの先延ばしを愉しむ」みたいな歪んだ悦楽に耽っていると、この120分のDVDを視聴するよりも先に自分の余命が尽きてしまったりするキケンもあるわけで、せめて、嘘でも構わないから、DVDのパッケージに「賞味期限」とか明記してほしい。

一気に観なければイイだけなのではないか、と、ふと思った。きっとDVDの映像は複数のチャプターに分かれているだろうから、その一つ一つを数日おきに観るとか、もしくは週末だけ観るとかすれば、一気に観終わってしまう切なさは回避できそうな気がするものの、万が一にもチャプターが分かれていなかった場合の手立ても考えておくべきで、その場合は、120分を3分ずつ40回に分けて視聴する。「1日1回3分だけ」とルールにすれば、40日間に亘る規則正しい習慣にもなろうと云うものだが、なにやら夏休みの宿題に取り組もうとする小学生の決意と同種の決意のような気もし、だとするなら、この決意は3日目くらいで挫折することが運命づけられている。

とは云え、「試しに、チョットだけ観てみよう」と思い立ち、ついに自分は『"Don't Trust Ryohei Shima" TOUR〈完全版〉』を開封し、ディスクをセットすべくDVDプレーヤの電源ボタンを押した。DVDプレーヤが動かない。予想外の事態が、「愉しみの先延ばし」をさらに延長させようと立ちはだかったとしか思えないが、むしろ自分を悩ませる問題は一瞬にして「DVDプレーヤが動かない」へと置き換わり、しばし茫然とし、それから電源ケーブルなどの配線を調べ、しかし解決には至らず、憂鬱な気分に陥って半日が過ぎた頃、DVDプレーヤに小さな「リセットボタン」を発見した。押してみた。直った。疲れた。そして『"Don't Trust Ryohei Shima" TOUR〈完全版〉』を、まだ観ていない。

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