Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

約67%ほどの正解 ―アルマイトの栞 vol.166

.jpg 音源を見付けたかったのは、’80年代後半に、ムーンライダーズの鈴木慶一さんが作詞と作曲を手掛けた『こんなじゃダメ神様』で、今ならガールズ・ユニットとか呼ばれるだろう「チロリン」が唄い、やはりムーンライダーズの岡田徹さんがプロデュースをしていた。そのCDを見付けたと思った。「チロリン」の名前と、収録曲に『こんなじゃダメ神様』が在り、当時の、岡田徹さん作曲『(チロリンの)星に願いを』も入っていて、もう間違いないと、レジへ直行した。それが、メンバーだけを一新して昨年デビューした「新・チロリン」のアルバム『Chit Chat Chiroline』だった。ジャケのデザインを見て、’80年代じゃないと気付くべきだ。

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コトの発端は、何となくの気分から、いとうせいこうサンの小説『ノーライフキング』を久しぶりに読んだことに始まり、それが発表されたのは’88年8月で、翌年に映画化され、その劇中歌が『こんなじゃダメ神様』だったり、エンドロールで流れる主題歌が『(チロリンの)星に願いを』だったと、アタマの中で連鎖的に独り言的な話題の展開をさせてしまい、そんな時代の、しかもマイナーであろう音源を本気で探すなら、根気強くdisk unionとか神保町のJanisを回ったりすべきで、タワレコの棚から見付けたなら、その時点で新譜だと考えるのが真っ当だろうし、そもそもJ-POP新譜のフロアだったじゃないか。「正解だ!」と思い込むと見直しをしない習性は、受験生の頃から変わらない。

ともかく手に入れたCDは、岡田徹さんプロデュースのまま、メンバーを一新しつつ、どうやら’80年代当時の数曲を新しいアレンジでリメイクした楽曲と、幾つかの新曲で構成したアルバムらしく、明らかに新曲だと判断して構わない曲は、歌詞に「ケータイ」の語が現れる一曲だ。’80年代であるわけがない。なんにせよ、総評としては「約67%の正解」の音源を買ったのだと考えることにした。嘆いているのではなく、偶然の購入とは云え、自分の好きな楽曲ジャンルに入る類のアルバムではあったので、むしろ繰り返しヘッドフォンの爆音で聴き、’80年代後半から現在に至る電子音響の変遷にも思いを馳せ、「リズムマシンはヴィンテージ機材か?」などと、無駄な探求心まで現れる始末である。

約67%の正解だとすれば、失点の33%とは「誤った買い物をする自分の危険性」だ。十代の頃、とあるベスト・アルバムを激安価格で発見して買い、帰宅して聴くと、誰だか知らない人の唄声で、困惑してジャケを丹念に観察したら、極小の文字を見付けた。「本人の歌唱ではありません」。オトナの卑劣さを知った瞬間だ。だが、騙される自分が悪い。「新・チロリン」はニセではなく、「開業当時の復刻調デザイン車両だけどLED照明を全面導入した銀座線」と同じだ。どんな喩えなのか?。本の立ち読みと同じく、CDも慌てず試聴する習慣を持つべきで、そうしないと自分は、映画『ノーライフキング』のサントラだと早合点して『ライオンキング』のCDを買ってしまいそうなくらい危うい。

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