Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

ヤスリ掛けはまだ ―アルマイトの栞 vol.93


撮影:大津伴絵
町工場をテーマに、町工場で上演した『すみだフリオコシ』の第一段は、11日(金)に無事終演。雪の中を御来場頂いた皆さま、ありがとうございました。「要予約」の公演だったので、来場者数の把握はしていたつもりなのに、なぜかその人数を上回り、「超・満員御礼」になってしまった。当日になって、なんとなくの心変わりで映像プロジェクターの設置位置を変更したのだが、あの気まぐれは天啓だったのかも知れない。予定通りの位置にプロジェクターがあったら、あの人数は入らなかった筈だ。ライヴで踊った鈴木一琥さんをはじめ、関係者全員が「気まぐれ」で功を奏すると云う、本来なら有り得ない舞台進行スタイルである。

そもそも、この作品の制作過程が関係者全員の気まぐれの連鎖だった。当初は「10分前後の映像作品」と話していた筈が、最終的には33分の作品になって、一琥さんの踊るライヴパートも長くなっていった。会場となる浜野製作所のプレス工場で、何をスクリーン代わりに使って映像投影するか検討しているうちに、「いっそ、工場の空間に直に大きく投影してみれば」となり、試してみたら予想以上に得体の知れない空間が現れ、それで話が決まってしまった。そんな諸々のことが、全て本番を目前とした時期に決まっていったのである。映像プロジェクターの設置位置に至っては、当日の、本番2時間前に最終決定だ。「仕込み図」の存在など、描いた自分さえ忘れてしまった。旨くいったのが不思議だ。

あまりとやかく事前に細かな計画など立てないほうが好いこともある。「計画」するから「失敗」するのだ。時と場合によりますが。少なくとも、『すみだフリオコシ』の第一段は「気まぐれ」と相性が好かったらしい。それはたぶん、今回の作品がかなり荒削りなものだったからで、もし作品が隅々まで精緻に作り込まれた状態に至っていたら、こうはいかない。音楽を担当してくれたタニモト・タクが終演後に「今回は、音楽にしても、作品としてはヤスリ掛けしてない、まあバリ取り前の状態なんだよね」と口走り、思わず大きく頷いてしまった。『すみだフリオコシ』は第二、第三と継続展開することで話が進んでいるが、さすがに今後の「ヤスリ掛け作業」は気まぐれでやらないほうがいいんじゃないかと思うのだった。検品でハネられてはいけない。

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