『新装大回転玉手箱』旅へ ―アルマイトの栞 vol.62
『新装大回転玉手箱』テント劇場の東京公演は無事に終了して、黒テントの人々は7月末までの全国旅公演へと出掛けて行った。それで15日(月)はテント劇場の解体作業だった。テントの幕地を剥がして骨格があらわになった姿は、なんだか壊れていくロボットみたいである。さらに骨格を解体していく作業を眺めていたら、その様子が何かに似ていると思ったのだけど、それはモデルガンの分解である。「スライドストップを外して、フレームとスライドを滑らせて離します」とか云った、取り扱い説明書の文章を思い出したのである。このテントの骨格も同じような仕組みだけど、そもそも部材の形状がガバメントの弾倉に似ている気がする。なんでそんな連想が出てくるのか、自分でも不明である。
ともかく旅公演の無事を祈るばかりなのだが、かなりとんでもないスケジュールであることは、黒テントの公演案内サイトを見てもらえればよくわかる。この人たちは日本地図を見たことがあるのだろうか。不安だ。東京から桐生に行って、仙台まで行ったかと思えば次はいわきで、そこから函館である。終盤の大阪、郡山、金沢ってのもどうなのか。自分でも何を書いてるのかわからなくなるが、これは明らかに迷子である。既成の演劇の概念を壊してきて40年の黒テントだが、ここへきて日本地図すらぶっ壊し始めたのだろうか。地理が苦手科目で、くわえて極度の方向音痴の僕ですらどうかと思うような迷走ぶりだ。伊能忠敬が見たら逆上するに違いない地理感覚である。聞けば21箇所の旅先の半分が寝袋だとかで、同行してドキュメント映像を撮れば、ナボコフの『ロリータ』並みのロードムービーが出来上がることは確かだ。
「道中ご無事で」と、時代劇めいたコトバで見送るしかない『新装大回転玉手箱』は、まさに旅巡業もしていたストリッパーの物語です。お近くにお住まいの方は、ぜひ足を運んでみてください。
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