Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

コンカリーニョ(札幌)にみる仮想→具体化のダイナミズム ―発見する場所10

何事も考えることと行うことの間には大きな溝がある。けれどもその溝を軽々飛び越える人がいる。 先日お会いした札幌のNPO法人コンカリーニョの理事長の斉藤さんは、その飛び越える人である。

コンカリーニョは、札幌の西の琴似駅の前に位置する2つの小劇場の運営に関わり、コンテンポラリーダンスを中心に、意欲的な活動を行っている。 このコンカリーニョの核心は、自分達でお金を集めて、劇場を立ち上げようと言うところだ。詳細な経緯はweb等で見て頂ければ良いかと思うし、実際に足を運ばれるとなお実感するだろう。

端的には、
小劇場がないならつくろう。
資金が必要なら集めよう。
誰もやらないなら、私がやろう。

そいうことである。
もちろん、そこにはいろいろな戦略があり幾多のハードルがあるのだが、実現したという一点において、他の動きとは大きな一線を画している。

今年の8月福岡で行われた建築学会大会の関連行事として行われた建築計画委員会の研究懇談会(「建築計画研究のイノベーション-建築計画研究者の第三世代マッピング-」08/31)のパネリストの一人として、少ししゃべる機会があったが、そこでの私のテーマは『実践と計画の論理』。
冒頭に建築計画第一世代の都市のアクティビティの広がりと、1980年代の言語化の二つのキーワード提示し、都市の舞台芸術の場の実現に関わることであれば、どのような事も実践であるという自身の日々の活動のスタンスを述べて、10-BOX、音楽スタジオ(MOX)、仮設神楽舞台、荒井市営住宅のワークショップの等の計画・設計の参画から、現在進行中のプロデュース公演の参画までのアプローチについてプレゼンテーションを行った。

プレゼンテーションの中身には、幾つか反省点があるのだが、その最後に述べた一つに、地方でコトを成立させるためのアプローチとして、プロジェクトを仮想(妄想)することの意義がある。
プロジェクトのための調査ではなく、プロジェクトを仮に思い浮かべてみて、そこからあるべき調査、その地域におけるリアリティのあるプロジェクトのスケールそのアウトラインを描く。そこでは例えば仙台で小劇場をつくるというプロジェクトを妄想してみる。するとそのプロジェクトの成立に必要なキーパーソンの10人くらいの顔が浮かび上がってくる。
投げかけに必要なテーマやデータから、調査や具体化のリアリティやアプローチをみつけていく。そういう方法もあるのではないだろうかと問いかけた。

初対面ではあったが、都市の演劇状況をつくり出すためにはとする斉藤さんとの会話は、仮想→具体化→仮想の重要性を示唆するものであったし、恐らくコンカリーニョのプロセスも、まさにその連続だったかと思われる。 目標があってそれを実現するのだが、その目標は見かけは多分スケールアウトしている(リアリティが無い)のだが、実態はスケールアウトせずにステップを踏んでいる。 このギャップは、僕の理解では仮想の段階(目標の設定)がある意味何も考えず(直感だったり、熱い思いだったり)最初にあって、そこから綿密なステップがつくられていく。
実は当たり前のことなのだが、多くの場合、目標の設定にすぐリアリティが問われ、結果的に目標どころか実現しようとする行為自体のリアリティを失う。 そんな悪いスパイラルにはまってしまう。

本当のターニングポイントはわからないが、そのスパイラルにコンカリーニョははまらなかった。そういうことなのだと確信した。 首都圏ではない都市戦略として、演劇状況をつくり出すヒントを幾つも掴むことが出来た。 この前の福岡のFPAPとはアプローチが異なるが、東京から遠く離れた札幌と福岡で面白い動きが生まれているのは、非常に興味深い。

都市戦略と都市間競争の時代に、舞台芸術の創造環境も本格的に入ってきたことを実感しつつある。

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