Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

小劇場集積都市「大学路」 ―発見する場所08

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昨年からソウルの大学路に足を踏み入れ、その空気を描くことに悪戦苦闘している。実はここ大学路は、知る人ぞ知るアジア随一の小劇場の集積エリアなのである。その数なんと80。
日本の小劇場の集積エリアと知られている下北沢には、約500m四方に10の小劇場があるが、同様の範囲に80弱の小劇場が存在していると言えば、その状況がなんとなくイメージして頂けるかもしれない。

韓国の状況に詳しい平田オリザの著書に、大学路について断片が書かれていることはあるが、日本でもそれほど知られている訳ではない。
しかし劇場建築に関わる者としては、この小劇場の集積状況は本当に凄いの一言につきる。それは劇場が集積していることに加えて、ほぼ全部がロングラン公演だからである。多くの公演は平日も公演が行われ、期間も大体3ヶ月程度、長いものでは半年から一年間にも及ぶ。

具体的には、オーナーから劇団が賃貸契約で場を確保する形となっているのだが、自前でミュージカル劇場を持つ例も見られ、確実に街と劇場が一体化していると言える。観客は、取りあえずこの大学路に来てその日行われる80近い演目の中から、見たい芝居を選んで各小劇場のチケットボックスに並ぶ。
チェーホフから民俗芸能まで、演目の内容も価格も幅広い。夕刻を過ぎると、雑踏の中で各劇場の劇団員達の呼び込みが始まる。

僕自身は、この街のつくられ方、劇場が成立する仕組み、集積により発生するアクティビティ、そしてこの場の空気を掴みたいと思っている。ハングル文字に囲まれながら、取りあえずは歩いて、記録して、聞いて、また歩く。
調査はまだほんのさわりの段階であるが、日々発見の連続であった。

半年ぶりに訪れた大学路では、新しい小劇場の建設が始まっていた。下北沢では、道路の拡張事業がいよいよ着手されようとしている。この状況になんとかして、布石を打ちたい。

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