Tetra Logic Studio|テトラロジックスタジオ

建築・舞台芸術・映像を中心に新しい創造環境を生み出すプラットフォームとして結成。プロジェクトに応じて、組織内外の柔軟なネットワークを構築し活動を展開。

職業意識の芽ばえる時 ―アルマイトの栞 vol.1

二年ばかり会って居なかった人に久し振りに会って話をした。 今は個人事業主でデザイン事務所をしているKさんである。 Kさんは来年、自分の事務所を法人化する計画だと云う。 それで会社を作ってしまった僕からいろいろ話を聴きたかったらしい。 今後一緒に何か出来そうな人でもあるので、久し振りに会えたのは僕にとっても嬉しかった。 法人化する時に必要な面倒な書類はTetra Logic Studioで作ったものを雛形として貸す約束をして別れた。

そして今朝、Kさんからメールが届いた。 そのメールに「経営者って基本的に孤独なんですよね」と書いてあった。 同感である。 確かに仲間と一緒にやっているわけだが、どうにも孤独感が付いて回るのは事実である。 「経営者」と云っても、行き掛かり上の諸条件で消去法的に「社長」にされてしまっただけなのだが、それでも世間的には銀行なんかで「社長様」なんて呼ば れるわけで、こんなことを繰り返されるうちに自分の中に「社長の自覚」が芽ばえてしまう。

職業意識と云うものは、周囲からの認識による視線によって自分の中に芽ばえてしまう自我なのだと思う。 大学の教員になりたかったわけでもなく、なるつもりもなかったのに、何故か大学の教壇に立つことになって、周囲から「先生」なんて呼ばれることになり、「自分は大学教員であるらしい」と思い、「それならソコソコそれらしくしようと」努めてきた。 それと同じことが、いま「社長様」呼ばわりされることで再び起きている。 そして奇妙に孤独な場所に自分を発見するのである。

「孤独感」と云うのは恐らく相対的な感覚だろう。 「思っていたより孤独だな」とか「以前より孤独になったな」とか、何か前提になる漠然とした尺度があって初めて感じる気持ちなのだと思う。 そして今年はどうも孤独感に苛まれる年になり、「社長とは何者なのか」と日々考えることになったのである。 そんな折のKさんのメールは僕に一つの答えをくれたのかも知れない。 「社長とは孤独と対峙する人である」と。 たった一つの無線機で後方部隊と連絡を取りながら塹壕に立て籠もっている隊長の心境である。 小さな会社の社長と云うのは、いつでも決死隊を率いることの出来る、まあ軍隊で云えば中隊長か小隊長くらいの位置付けなんだろう。

そんなことをつらつらと考えて居ると、世の「企業戦士」達が通勤電車の中で司馬遼太郎あたりの「軍記物小説」を読んでいる気持ちが解ってみたりするのである。 それなら僕は「コンバット」にでもしておこう。 取り敢えず攻略しなければいけないトーチカは、あの有刺鉄線の向こうにある。

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